目次
- 1.トレイルランニングトレーニングの考え方
- 2.ヒルクライム
- 3.ダウンヒル
トレイルランニングの上り下りをトレーニングして段差を攻略だ
1.トレイルランニングトレーニングの考え方
垂直方向の動きを意識した強化を
ロードを走るのであれば、練習過程で「水平方向の動き」を中心に意識すれば良いのですが、アップダウンのある路面を走ることが多いトレイルランニングでは、加えて「垂直方向の動き」を意識する必要があります。
要は自分の体を上へ引き上げる筋力、かつ下りの衝撃に耐えられる筋力を養成するということが重要になります。
タフな心肺機能を養う
不整地を走るトレイルランニングは、地形の変化にともない心拍数が大きく変化します。上りでは上昇し、下りでは下降。このためロードを走るのとは異なるタフな心肺能力が要求されます。
上り下りで大きく心拍数が変化しますので、さながらインターバルトレーニングを行なっているような負荷が心肺機能にかかってきます。
練習のポイントは筋カアップと感覚の研磨
上り下りの練習で、考慮してほしいことがあります。
上りで使う筋力や心肺機能を高めることは「代替的トレーニング」が可能ということです。トレイルの上りに強くなるためには、必ずしもトレイルを走らなければならないというわけではありません。
ロードの上り坂でも可能ですし、スポーツクラブのトレッドミル(ランニングマシーン)なども良い練習となります。工夫次第では身の周りにある階段なども格好の上り強化の場となります。
一方、なかなかそうはいかないのが下りの強化です。下りに必要とされる筋力は、ロードの下りでももちろん養うことはできますが、トレイルで不規則に現われる岩や木の根や段差にうまく足を置いていくような俊敏性までは、磨くことはできません。
この能力(反応力)は神経伝達系の問題であり、実際にトレイルを走ることでしかうまく鍛えることができません。視覚でとらえた路面情報をいかに速やかに体の反応につなげるか、この反応力こそ、下りのスピードアップにつながる重要な要素となります。
筋カトレーニングではなく、感覚を養うトレーニングは、やはりトレイルという現場での実践練習が、いちばん効果のあるトレーニング方法といえます。
2.トレイルランニングトレーニング―ヒルクライム
上りは、うまく体を使うことで、より少ない労力で効率的に走ることができます。上りに入ると「苦しいパートを早く通過したい」という思いから、腕の振りを鋭くし、力任せに登ろうとしてしまいがちです。
アップダウンが連続するトレイルでは、このような登り方は、いたずらに体力を消耗するだけで、長続きしません。上りのパートに入ったら、以下のことを頭に入れながら走りましょう。
①上り導入部は、その前の下りや平坦部分で加速したスピードを上り方向へうまく伝える感覚で入る
そのときにストライドが自ずと小さくなるので、バランスをとりやすくするために腕を低めに振る。
②惰性のスピードがなくなったら、体の重心を前にかけ、前傾する力を利用し、登る方向へ力を伝えながら走る
前に倒れ込みそうになるので、一歩出す、一歩出す、という要領で。膝をあまり曲げ伸ばししない走法を意識する。
③上りが終わる少し手前から、前傾姿勢を解きながら徐々に加速し、次の下り、または平坦部分に備える
トレイルランニングでは、積極的に歩きを入れましょう。
とりわけ急斜面では脚力温存のため、脚に余裕があっても歩くようにしましょう。
歩き方もいくつかのポイントがあります。効率的な歩き方をマスターすると、上りパートもスムーズに進めす。また、レースでは全体的なタイムアップにつながります。
①脚部にかかる荷重を補助するために腕を積極的に使う。
前に出した脚の膝頭に手のひらをそえ、曲げた腕を伸ばす力を使って体を上方向へ引き上げる。大きな段差や急斜面では、両腕を使うと有効。
②太もも裏面の筋肉(ハムストリングス筋)を積極的に使う。
急斜面の上りは、太もも前面部に大きな負荷がかかる。この負荷をより軽減させ、終盤まで快適に走れるよう、ハムストリングス筋を積極的に使う。
この筋力を意識して有効に使うポイントは、ステップをガニ股にとらずに、やや内股気味にとること。このステップをとることで、お尻に力がかかるのが確認できれば、うまくハムストリングス筋を使えている証拠。
きついと感じる急斜面を走る場合には、意識的にコース取りを蛇行気味にとることです。こうすることで斜度が緩和され、急な斜面も緩い斜面と同様な走り方をすることができます。
蛇行するタイミング(回数)は、傾斜がきつくなるほど細かくとるようにしましょう。
上りがあまり得意でない方や筋力に自信のない方は、この走り方をぜひマスターしてください。トレイルの幅が狭く、蛇行できるスペースがない場合やレベルの高いランナーは、直線的なコース取りで走る方法を推奨します。
この走法のほうが速く走ることができますが、ふくらはぎへの負荷が大きくなるので、自分の脚力と体力をしっかりと考える必要があります。
どちらの走法ともに共通しているのは
①できるだけ安定した良い足場に着地する。
②体の重心を前にして、倒れ込むような力を前進する力に変換利用する。
③重心移動では、地面を蹴り込まないような足使いをし、地面に足を置くような走りを心がける。
④腕はバランスをとるために、肩の力を抜いてリラクッスして振る。
⑤走る体勢は、長時間続けないことです。
走る体勢は、ふくらはぎの筋力を過剰に酷使します。走り→歩き→走り→歩きと、ふくらはぎに疲労が蓄積する前に歩きに変えるようにしましょう。
日本のトレイルには、石段・木段のような段差を登るシーンが数多くあります。石段を使って、さまざまな段差の登り方を解説していきます。
まず、このような段差のパートは、ただやみくもに登ろうとしないことが重要です。
無造作に登ると、無駄な疲労を蓄積してしまい、このあとの快適なトレイルランニングにマイナスの影響を及ぼしかねません。
力任せに一気に登ろうとはせずに、なるべくパワーロスをしないで登る技術を身につけてください。
基本は、歩きです。
一歩一歩、適度な歩幅で着実に進みます。その際、大股なストライドにならないように注意しましょう。
また、腕を太ももにあてて腕の力を利用し、脚力をサポートするように心がけてください。とりわけ大きな段差では、脚力だけで一気に登ろうとはせず、できる限り腕の力のサポートと合わせて登るようにすることがポイントになります。
目線は2、3歩先を見つつ、ときおりその先の行くべきルートを確認しながら進みましょう。
比較的小さな段差であれば走りましょう。この際にポイントになるのが、力まないことです。上半身をリラックスさせ、体の重心を前に持っていきます。前に倒れ込む力をうまく利用しながら「ちょん」と、できるだけ小さなジャンプで段差に体を乗せるようにします。
できる限リパワーロスを抑えて段差を越えることができるよう、必要最低限の高さをジャンプするように心がけてください。
ストライドは決して欲張らずに、小さく確実に進むことが重要です。
トレイルでの段差は、一定のステップ間隔のものだけではありません。ときには間隔の広い狭い、段差が大きい小さいと、混在している場合もあります。
このような段差では、できる限り段差の小さい部分を選びながら登りましょう。
以上が、石段・木段といった段差のある場所の基本的な登り方になりますが、最後に少し応用的な登り方を解説しておきます。
まず、段差の傾斜角度や高低差が一定でない場合は、「歩き」と「走り」を織り交ぜた走法が有効なので、お勧めです。
急な傾斜は「歩き」、緩くなったら「走り」、と使い分ける走法です。段差が大きい場合と小さい場合も、同様に「歩き」と「走り」を使い分けます。もちろん段差が大きい場合は「歩き」、小さい場合は「走り」ます。
この走法をとるときは、以下を注意するようにしてください。「走り」に切り変えたときに、どうしてもリズムが速くなりがちです。「走り」「歩き」に関わらず、一定のテンポを守るよう心がけてください。
3.トレイルランニングトレーニング―ダウンヒル
トレイルランニングの大きな魅力のひとつとして、下り(ダウンヒル)があげられます。自分の理想のステップで下ることができたときの気持ち良さは、トレイルランニングの醍醐味といえます。まるでダンスをするかのように、軽快にリズミカルに駆け下る感覚をつかめると、トレイルランニングの世界が一気に広がります。しかし一方で、下りは多くの初心者にとって難しいパートでもあります。ここではより安全に楽しく下る走法について解説していきます。
まず基本は、小さいステップで確実に下ることです。無理にスピードを出す必要はまったくありません。自分の感覚に合った速度で、確実に一歩一歩下りましよう。また、下りでは目線に注意してください。初めはどうしても直前のステップばかり凝視(近目)しがちですが、慣れてきたら前方5~10mを見る「遠目」を意識します。
前方のカーブや落ち込みなどの形状を素早く意識することで、より安定したスムーズな走りが可能になります。
緩斜面の下りに慣れてきたら、少しずつストライドを伸ばしていきましょう。上達するほどに、普段の着地点よりも前方の安全な路面に着地できるようになるはずです。
トップ選手の下りで共通していえることがあります。脚部はトレイルの形状に合わせ着地点を探すため、前後左右に動きつつも、体幹部分はつねに安定していて、ほぼ一直線上を進むように見えることです。より直線的なコース取りができるようになれば、確実に上達しているはずです。一定の技術が身についたら、次は急斜面です。
まずコース取りに注意してください。初めのうちは、前方への転倒の恐怖心から足がすくんでしまいがちです。慣れるまでは意識的にトレイルの幅をいっぱいに使います。ジグザグにコース取りをすることで、傾斜を緩くして走ることができます。両腕はバランスをとるために低めに振り、なるべく安定した足場を探しながら下りましょう。
さらに慣れてきたら、コースをより直線的に取れるよう練習を重ねてください。
ある程度の幅のあるトレイルでは、ジグザグと蛇行したコース取りをすることで、斜面の角度を緩和することが可能です。自分の力量を上回る急な下り斜面では、この走法を用いましよう。この際、意識してほしいのは「腕ふり」です。
ロードを走るのと違い、トレイルではその形状に合わせて、ステップを取りやすい路面を選びながら進むことになります。このため一歩一歩の幅、ストライドは、短くなったり長くなったり不規則になります。
柔軟にストライドを確保できるように、腕を振る際には、ロードを走るときのようにしっかり前後に振るのではなく、肩の力を抜いて、バランスをとるような腕の振りを心がけてください。
石段や木段といった段差のあるパートの下り方を解説していきます。
日本のトレイルには、このような石段や木段のパートが多々あります。街中の階段と異なる最大の特徴は、一段一段の高さや間隔が一定ではない、という点。まずはこの特徴を頭に入れたうえで、以下の技術を磨いてください。
基本は、上半身の力を抜いてリラクッスした腕振りをすること。これにより、テンポよく下ることができます。目線は2、3歩先を見つつも、ときおり10mくらい先のトレイルの状態も確認しながら進みましょう。
段差の高さやステップの間隔が一定でない石段や木段では、なるべく段差が低い場所あるいは安定した足場がある場所を選んで下るようにしましょう。
とくに、その先の着地場所が見えないような大きな段差のある場合は、転倒や捻挫の危険性をはらんでいますので、極力避けるようなコース取りが必要になります。
雨のあとなどは、石段はとても滑りやすい状態になっています。また、緑色に苔むしたような石段も細心の注意が必要となります。
このような状態の石段では決して無理して走ろうとせず、歩きに切り替えましょう。
滑りやすそうな路面状況でのポイントは、着地する際に石段面に対して真上(垂直方向)から着地するようにすることです。まずは転倒しないこと。このことをしっかりと心がけてください。
木の根が張り巡らされたトレイルは、日本のトレイルの代表的なサーフェイスといえるでしょう。
頻出するサーフェイスですが、本の根に足をとられると、突き指をしたり、転倒をしたりする可能性がありますので、しっかりと避けるようにしましょう。植物を傷めないという点でも実践してください。
トレイルを初めて走る方には、張り出した木の根が障害物に思えるかもしれません。
しかし、走り慣れてくるうちに、本の根を避けながら走る楽しさに気づくはずです。
まずは木の根の状態を見ながら、より走りやすい足場を見つけることが大切です。そのためには、体をスイングさせながら着地点を見分けていくという下り方が要求されます。重要なポイントは上半身をリラックスさせて、両腕でリズムとバランスをとりながら下ることです。
慣れてきたら、走りやすい足場に着地するために、ストライドの幅に変化をつけていきます。こうすることで、より直線的なライン取りで下れるようになるはずです。ストライド幅の長短を自在に操るために、ここでもリラックスした腕振りがとても重要になります。
木の根の張り巡らされたトレイルを駆け抜けることは、トレイルランニングの醍醐味のひとつです。まるでダンスをするかのように自分自身のステップに大いに酔いしれてください。上達するほどにトレイルランニングのさらなる魅力を感じられるはずです。
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