自分の体力が目安でスピード・距離・時間など他人と比較しない
1.他人と比較しないことが「脱、初心者」のポイント一流アスリートたちを見ていると、「永遠のライバル」「○○の名勝負」といったように、よきライバルが存在することが、記録を伸ばしたり、モチベーションを向上させるために不可欠な要素となっているようにみえる。
しかし、初心者にとっては、スピード・距離・時間など、すべてにおいて他人と比較することは禁物だ。
東京マラソンのような大人数の参加者がいる市民マラソンのスタート地点では、先頭のランナーと最後尾のランナーでは、同じスタートの合図があって動き始めても、実際に走り始めるまでには相当な時間差がある。
ランニング生活もこれと同様で、そもそも体力がある人と、体力に自信がない人では、まずスタートラインが違うため、おのずと取り組み方が違ってくる。
だから一緒に練習を始めたAさんが5km走るからといって、「私もどんなに苦しくても5km走り切らなくちゃ」とがんばったり、無理して速いペースに息を切らせて合わせるのはタブー。それでは長続きしないし、なによりケガの原因にもなってしまう。
初心者にとっては、走るスピードや距離はあまり問題ではない。たとえば30分と決めたら、その間ゆっくりでも、距離が短くても、走り続けられるようになることが最初の目標となる。その目標設定は、あくまで自分の現在の体力が目安。
他人と比較せず、無理のない目標設定をし、それをクリアしていくことこそ、初心者脱出の早道となる。
そうした意味では、最初は仲間と一緒に走るよりも、1人で走るほうが自分のペースを守れてベターだといえる。ただ、その場合に気をつけたいのが、1人で練習するためにアドバイザー役がおらず、「自己流」の悪い走り方が身についてしまうおそれがある点だ。
体が左右どちらかに傾いているなど、故障につながるような悪い癖が-度身についてしまうと、それを直すのに大変苦労するので、定期的に仲間と一緒に走る時間を設ければ、アドバイスし合うことで自己流に陥ることを防げたり、走り続ける励みにもなるので、1人の練習と仲間との練習を上手に組み合わせよう。
がんばり過ぎない
2.他のランナーを意識せずに自分の走りをつらぬく
「笑顔でゴールする」ことをめざして走りたいレースに出ると、まわりのランナーが自分より速そうに見える。はじめてのレースでは気後れするのもしかたがないが、市民マラソンは競争ではない。自分が楽しく走れれば、参加した意義は十分満たされる。「笑顔でゴールすることが勝利なのだ」と考え、まわりのランナーにペースを乱されないことがたいせつになる。
市民ランナーには、タイムや順位にこだわる人も多い。スタートやゴール直前で猛ダッシュをかける人も1人や2人ではない。レース途中でも、ほかのランナーに抜かれると無理をして抜き返す人がいる。大人げないといってしまえばそれまでだが、レースの怖さはそこにある。
スタート直後はオーバーペースに要注意
まず重要なのがスタートだ。スタート直後、ランナーは気持ちが前に行きがちなので、スタートダッシュをかけたがる。
ランナーが多いと、後方集団はダッシュもできない状態だが、それでもスタート時はペースが速い。その集団のペースに自分の走りが合っていればいいが、合っていないとそのペースに引きずられて、自分の走りができないまま前半をとばしすぎるという事態になりかねない。
集団に巻き込まれないために、最後尾からスタートする方法もあるが、最後尾がスタートラインを越えるまでかなりのタイム差があるとき、大会の公式時計は先頭ランナーに合わせてあるので、ペースづくりには使えない。公式時計を見て「だいぶ遅れている。ペースアップしなければ」などと思うと、オーバーペースを引き起こしてしまう。
あくまでも、自分の時計で自分のペースを確かめ、ペースをコントロールしなければならないことを忘れてはいけない。
他人のペースに合わせずにあくまでマイペースで
レース途中でも、ほかのランナーのペースに惑わされないことがたいせつだ。同じようなペースの人を見つけると、「この人について行こう」とか、「この人をペースメーカーにして走ればラクそうだ」などと思ってしまう。それでよい結果が出ることもあるが、それは危険な落とし穴。
ほんの少しの速いペースがポディブローのように効いてきて、30キロ以降からゴールまでがとくにつらくなる。
練習さえすれば強くなるというものではない
人間が健康になるために必要なのは、「運動・栄養・休養」を上手に組み合わせることが基本だ。「十分な運動をしておなかを空かせ、おいしく食事を摂ってよく眠る」これが人間の生活の基本というわけだ。しかし、とくにまじめな性格の人に多いようだが、ときに「やり過ぎてしまう」ことがあるため、注意が必要だ。
たとえばダイエットに有効といわれた飲み物をひたすら飲み続けた結果、その飲み物にはダイエットに有効な成分のほかに糖分も入っていたため、糖の過剰摂取で糖尿病になってしまったという話があるが、ランニングの練習もこれと同様で、とにかく練習さえすれば強くなるというほど単純なものではない。
北京オリンピックにおいても、一流アスリートが直前になってケガで出場を断念したり、途中棄権するといったことがあったことでもわかるように、オーバーワークは故障の原因にもつながりかねない。
ランニングの練習を始めた当初は、張り切ってどうしてもオーバーワークになりがちだが、まずは週に2回程度の練習から、ゆっくりと走り始めることを心がけるようにしよう。
また、実際にトレーニングを行う場合には、連日激しい練習ばかりを繰り返すのではなく、軽めの練習→強めの練習→軽めの練習→休みというように、軽い練習の日や休養をきちんとスケジュールに組み入れることが必要となる。
「休養」というと、なんだかさぼっているようで罪悪感を持つ人もいるかもしれないが、休養日にストレッチをして現在の自分の体調や筋肉の状態を確認したり、マッサージなどで体のケアをすることは、長く走り続けるために必要なことであり、そうした意味では、休養もまたトレーニングの一環だととらえるようにしよう。
そして休養日の翌日は、いきなりハードな練習はせずに、まずは軽めのトレーニングを行うようにする。これは風邪などで思いがけず練習を休んでしまったときも同様で、まずは軽めのトレーニングから始め、少しずつもとの練習サイクルに戻すようにすることが、ケガを防止する意味でも有効だ。
3.過去のスポーツ歴は無関係。大切なのは今の自分の体力
職場の同僚とよもやま話をしているとき、とくに男性は「高校3年間は甲子園を目指し、真夏の炎天下でも休まず練習に汗を流していた」「中学時代にはバスケットボールで都大会出場経験がある」といったように、学生時代のスポーツ歴について語り合ったという経験がある人は少なくないだろう。しかし、ランニングが「三日坊主」で終わってしまう人には、実はスポーツ経験がない人よりも、むしろかつて豊富な運動経験がある人のほうが意外に多いのが事実。そして昔はスポーツをやっていたけれど、「ここ10年くらいはまったくスポーツをやっていない」という人は要注意。
どうして過去に運動経験がある人が三日坊主になりがちなのかというと、「頭だけスポーツ選手」になってしまっている点にその理由がある。
運動経験がある人は、その経験にとらわれて、「自分は体力がある」と過信しがちで、そのため現在の体力の衰えを自覚できず、いざ走り始めると「昔は5km、10km平気で走っていた」という思いからついオーバーランになりがちで、長続きしないだけではなく、ひざや足首などをケガしやすくなってしまうためだ。
ただ、現在の体力を知るといっても、心拍数など、細かく数値を測る必要はない。そうした数値よりも、まずは現在の自分は、どの程度のスピードでどのくらいの距離を動けるのかを体感することが大切。そうして現在の自分の体力ときちんと向き合い、そこから無理のない練習量を設定しよう。
また、逆に運動経験がないからといって、臆病になる必要はない。体力に自信がないなら、まずは30分のウォーキングから始め、その間にストレッチや補強運動で筋力や柔軟性を補う。そうして体力をつけていけば、想像よりもずっと「走れる体」になっていくはずだ。
誰もが自分のできる範囲で自由に楽しめるのが、ランニングのよさの一つ。だから体力のない人も、運動神経に自信のない人でも、まったくハンデなしで取り組むことができるということを忘れずに、チャレンジしてみよう。
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