目次
呼吸筋トレーニングで酸素をたくさん取り入れてマラソンを有利に!
1.酸素をよりたくさん体内に取り入れる
「歩く」「走る」などの運動は、筋肉の収縮によって行われています。そして、マラソンに代表される有酸素運動を行うには、体内のエネルギー源と酸素が結びつくことが必要になります。有酸素運動では、エネルギーを生成する際、多くの酸素が使われています。
したがって、酸素をよりたくさん体内に取り入れられるほど、長距離を走る上で有利であるといえるでしょう。
呼吸によって体内に取り入れられた酸素は、血液中のヘモグロビンと結びつくことで全身へ運ばれ、さらに筋内のミオグロビンによって、毛細血管を通してその先の末梢神経まで届けられるのです。
血中に吸収された酸素は、心臓が収縮するごとに力ラダに送り出されます。ここで、いかに効率よく、酸素を力ラダに行きわたらせるかが重要なポイントになります。
トレーニングをはじめたころは、必要な酸素を迅速に力ラダ中に運ぶために、より多く血液を送り出そうと心臓が速く動きます。
しかし、そういった動きを繰り返していると、心臓は「速く動く」よりも、「1回でより多くの血液を送り出す」ようにと順化されていきます。
このように、トレーニングを続けることで、力ラダはより効率よく走れるように変化していくのです。こういった心肺機能の強化に有効なのが、インターバルトレーニングや高地トレーニングといった、マラソンランナーが行うトレーニングなのです。
2.呼吸器の構造
私たちの生命活動に必要な酸素を、体の中に取り込むために働いているのが呼吸器系です。空気の通り道を気道といい、「上気道」と「下気道」に分類されています。鼻からのど(咽頭)までの部分が上気道です。その先で食べ物の通り道である食道と枝分かれし、気道は喉援、気管、気管支を通って肺まで続いています。この喉頭から肺までの部分を下気道といいます。
気管支は、枝分かれしながらどんどん細くなっていき、その先端には、ごく小さな袋状の肺胞がついています。
空気を吸い込んでから、肺胞で酸素と二酸化炭素の交換を行い、息を吐き出すまでの一連の働きを呼吸といいます。呼吸には、「外呼吸」と「内呼吸」があります。
鼻などから空気を吸い込んで肺に取り込み、肺から二酸化炭素を多く含んだ呼気を吐き出す過程が外呼吸です。これに対し、肺胞で行われる酸素と二酸化炭素の交換過程を内呼吸といいます。
3.呼吸の能力
スポーツ選手は呼吸の能力が高いことが有利になります。たとえば、肺活量が大きければ、 1回でより多くの空気を吸い込むことができます。空気を吸い込むためには、肺を膨らませる必要があります。これには、胸壁にある内肋間筋と外肋間筋、胸腔と月期空の間にある横隔膜などの呼吸筋が動きます。したがって、これらの呼吸筋や、その助けをする呼吸補助筋の働きを高めておくことも、呼吸能力を高めるのに効果があります。
呼吸の能力に関係する肺活量などの数値には男女差があります。また、肺の大きさは成長に伴って変化します。そのため、ジュニア選手よりも、成人の選手のほうが大きな値になります。
また、身長の伸びが止まっても、胸郭はしばらく大きくなり続けます。それに従って、肺も大きくなるのです
4.「吸う」より「吐く」を強める
呼吸は、空気中の酸素を体内に取り入れるために必要です。有酸素運動であるランニングをしている時には、毎分100リットルあるいはそれ以上の空気を取り込むことになり、安静時の10~20倍にも達します。それでは、ランニングをしながら呼吸を楽にするにはどのようにすれば良いのでしょうか。
呼吸を意識せずに、 自然のリズムでランニングができれば一番望ましいのですが、スピードが増してくればそれに比例して酸素がたくさん必要になります。
すると、今まで別段苦しくなかったのに、息が苦しくなったり、呼吸のリズムが乱れてきたりします。呼吸の方法も安静時の鼻呼吸から、口を加えた「鼻一回呼吸」へと体の要求量に応じて変化していきます。
また、呼吸は「呼気」と「吸気」に分けることができます。ランニングする際に楽な呼吸のリズムを心がけるには、空気を吸う「吸気」よりも、吐きだす「呼気」を強めることが効果的であるといわれています。
吐かなくては吸えないわけで、呼気を強めることにより吸気も一層強められるのです。
四歩―呼吸が効果的
走りながら「大きくなめらかな呼吸」をしているか、 自分で意識してみよう。ここでの「大きな呼吸」とは、肺活量を目一杯使うことです。
肺活量の概念は走りながら時々意識的に大きく呼吸すると、機能的残気量(肺に残っている空気の量)を少なくする効果もあることが分かります。
吸い込んだ空気中の酸素を肺の中に残さず、できるだけ体内に取り入れることにより、空気中の酸素が有効に使われます。機能的残気量をできるだけ少なくすることは、肺胞がたえず新しい酸素を入れ替えられることを意味します。
呼吸はリズムだと言いましたが、走るリズムと合わせるとより楽な呼吸ができると言われています。このリズムも呼気を重点に1歩で「ハッー」と吐いて、次に吸うわけですが、 2歩間隔で吐くのも良いかもしれません。
2歩で吐いて、2歩で吸う「ハッー、ハッー、スー、スー」の四歩一呼吸のリズムもまた効果的です。
ランニングに慣れてきたら、 このように意識的に呼吸のリズムをつくってみると、楽な呼吸の仕方をつかむことができるのではないでしょうか。
もちろん呼吸が苦しい状態が続くと、長く走ることはできません。これがオーバーペースです。その人の実力では、無理なペースで走っている証拠です。
そのような場合は、スピードを落として、呼吸を整えることのできる速さで走ることによって、楽な呼吸を獲得しましょう。誰でも最初は苦しいものです。しかし、やがて気持ち良く走れるようになる時がくるものです。
5.すぐにできる呼吸筋のトレーニング
呼吸の疲労は、呼吸筋の疲労と言い換えることができます。呼吸筋が疲労したからといって「呼吸に使われる筋肉が疲れている」と誰もが感じるわけではありません。症状としては「呼吸が浅くなった」「息がしづらい」「胸がだるい」といったイメージがあてはまります。その呼吸筋、トレーニングによって鍛えることが可能です。
呼吸筋をトレーニングする簡単な方法に、どんなものがあるでしょうか。3つほど紹介します。記録に直結するものではないかもしれませんが、トレーニングに取り入れる価値あり! です。
1.鼻だけで呼吸しながら走る
ジョギングなどイージーなランニングをするときに、口を閉じて鼻だけで呼吸をしながら走ります。鼻は口よりも空気の出入り口が狭いため、細く長く息を吸い込んで吐くようになります。腹式呼吸を意識しながら行うことができれば良いです。
2.深呼吸をしながら走る
ジョギングやLSD、距離走などをするときに、深呼吸をしながら走ります。走り始めから終わりまで、できるだけ多くの深呼吸をすることがポイントです。
深呼吸は、腹式呼吸で行うことで呼吸筋のストレッチングにもなります。レースでも、深呼吸をすることが有効になります。前半は深呼吸できていたのに後半はできなくなってしまったら、酸素の取り込みが悪くなり、いっぱいいっぱいの走りになっている証拠となるのです。
3.マスクをして走る
学生と話していると、「マスクをして走ると、酸素が薄くなるんですよね?」と聞いてきます。それは大きな間違いで、酸素の濃度は変わりません。
マスクをすることで呼吸をしづらくし、呼吸筋を鍛えて換気量を増やそうとする目的があるのです。この方法も、かなり有効だと思います。
6.走っていると必ず成長のタイミングがやってくる
トレーニングのしすぎはお勧めしませんが、例外的なケースもあります。 ランニングを続けていると、ぽんっと体を軽く感じられる瞬間がやってきます。そし て、今まで維持できなかったペースで走れるようになったり、普段のランニングでは疲れが出始める距離を、軽々と越えられるようになったりします。
ある人はこれを「今日は調子がいい」と感、また別の人は「力がついてきたのかも」と期待します。 じつはこれ、気のせいでも調子の良い悪いでもなく、体がきちんと変化したことの表れです。
ですから、体が軽いと感じられた日は、定めていたメニューやコースのことは少し忘れて、快適な状態のまま行けるところまで走り続けてみてください。 しかも、この成長のタイミングは年齢に関係なく、一定のサイクルで訪れます。
本当に初心者ランナーの場合、最初に変化を感じるのは3か月前後。何が一番変化するかというと、呼吸です。
ランニングを始めたばかりの人は、すぐに息が切れてしまいます。 過負荷を感じ取った体は、新たな環境に適応しようと働き始めます。
その結果、酸素を体の隅々まで運んでくれる血中のヘモグロビンの量が増加し、一度に大量の酸素を運べるようになるため、呼吸がラクになるのです。 その変化に必要な期間が、80日から90日。
初心者ランナーの場合で言えば、走り始めた最初の1、2週間の刺激の成果が、80日、90日後に表れるということです。 例えて言うなら、私たちが息苦しさを感じているとき、ヘモグロビンはもっと酸素を効率的に運ばなければと使命感に燃えているわけです。
つまり、初心者の域を越えたランナーでも、ぽんっと体が軽くなった直後に適度な有酸素運動によって負荷をかけることで、さらなる成長を促すことができるというわけです。
逆に、今まで以上に走る力が身についた時に、それまでと変わらないペースや距離しか走らないと、体は「その程度でいいや」と感じてします。
刺激にならず、せっかくのチャンスを逃すことになりかねません。 10代の成長期だけでなく、いくつになっても身体能力は伸びていく可能性を秘めています。
自分を小さな枠に押し込めず、調子のよいときは調子に乗って、調子の悪いときはそれなりに走る方が、自分の成長を妨げず、気持ちよく、カッコよく走れるようになるのです。
7. 2拍子と4拍子のリズムがラクに走れる呼吸法
「ス、ス、ハ、ハ」のリズムが基本になる呼吸法走るときの呼吸法は、フォームとともにたいせつな要素である。
有酸素運動には大量の酸素が必要だ。酸素は呼吸によって肺に取り入れられ、酸素交換したあと、血液を通じて体中の筋肉に運ばれていく。なるべくたくさんの酸素を取り込むために、呼吸法にも気を配ろう。
ランニング時の呼吸で大切なことが2つある。ひとつは「吐く息を意識すること」。肺を空にしないで息を吸おうとすると、二酸化炭素が肺に残ったままとなり、充分な空気を吸えなくなる。レース中に呼吸が激しくなるときほど、意識的に息を吐くようにしよう。
もうひとつは「腹式呼吸」。
腹式呼吸では普段行っている胸式呼吸よりも、空気を多く取り込める。まずは正しい腹式呼吸法を安静な状態で身につけ、それからランニング時にも使えるようにしよう。
ジョギングの呼吸法としてよく知られているのが、「ス(吸う)、ス(吸う)、ハ(吐く)、ハ(吐く)」の2拍子のリズム。これはジョギングの墓本となる呼吸法で、比較的ラクに呼吸できる。このリズムを気持ちよく刻めるように走ることがたいせつになる。
スタート直後は4拍子の呼吸法でスピードを抑える
この呼吸法が乱れて「ス、ス、ハ」「ス、ハ、ハ」といった息づかいになってきたときは、オーバーペースぎみと考えよう。
心臓や肺に過度の負担がかかっている証拠で、少しスピードを落として走ってみよう。そうすると自分にとってラクなペースが見えてくる。
ラクなペースに戻すとき試してほしいのが「ス、ス、ス、ス、ハ、ハ、ハ、ハ」といった4拍子の呼吸法。「ス、ス、ハ、ハ」のリズムより余裕のある呼吸法なので、初心者にはとくに有効である。
また、走り始めたときなどウォームアップ的な走りのときにも、この呼吸法がおすすめ。スタート直後はどうしてもオーバースピードになりがちなので、スピードをコントロールするために、この4拍子の呼吸法を取り入れよう。
走り始めの5分間ぐらいは、「ス、ス、ス、ス、ハ、ハ、ハ、ハ」の呼吸法をぜひ試してほしい。
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