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レース中の水分補給で走りが劇的に変わる
人体にとって水分は非常に重要なもの。ランニング中は特に水分不足に気を付けるとともに、的確な摂取でスタミナや持久力もアップ。 1.人体の65%が水分!
水分は体温調節にはじまり、栄養素の運搬や老廃物を排出するなど、重要な役割を担うため、日ごろから水分補給は欠かせない。なにも暑い日に限ったことではなく成人が1日に摂取する水分量は約2.5リットル、それに対して排出される量も2.5リットル。
つまり摂取した分が排出されることとなる。ランナーにとっては涼しい季節や真冬でも重要なことに変わりない。
ランニング中は体内温度が上昇し、発汗する。発汗し、体外に排出されるだけでなく、体内温度を下げるためにも使われるので通常以上に失うと脱水症状になりかねない。そのため、ランニング開始前、ランニング中はこまめに補給することが重要です。
さらにのどの乾きを脳が認識して水分補給をしたのでは遅いということを覚えておこう。
摂取した水分をからだが吸収、代謝するまでに60~90分かかるといわれている。脳が認識するまでにも時間はかかるため、のどの乾きを認識しても脱水症状は始まっているのです。
これはトレーニングのみならず、レース中にはさらに重要な問題となる。給水ポイントでは喉の乾きに関わらず、必ず喉を潤すようにし、脱水を予防したい。
2.3つの誤解から学ぶレース中の適切な水分補給
マラソンレースでは、大量の汗をかき、体から水分が失われます。そのため、適切に水分を補っておく必要があります。しかし、水分補給の仕方についてはこれまでにもいろいろな考え方があり、また誤解されていることも少なくありません。レース中に水を飲むな、という誤解
「水を飲むほど汗をかき、疲労を早める」あるいは「水を飲むことによって意欲が低下する」などさまざまな理由から、かつてはレース中の水分補給を制限する考え方が根強くありました。
しかし、これらに確かな科学的根拠はありません。無理に喉の渇きを我慢して頑張っても、過度の脱水になれば、かえってパフォーマンスを低下させることにもなりかねません。さらに脱水が進行すれば、健康を損ない、熱中症におちいる危険性さえあります。
レース中にはできるだけ多くの水を飲め、という誤解
一方、水を制限する考え方から一変して、1970年代になると水を飲むことを積極的にすすめる考え方に変わってきました。
また、運動中の喉の渇きは体液が不足した後にやや遅れて感じることから、運動中には体液が不足しがちになります。そこで喉が渇く前に、意図的に水をできるだけ多く飲むようにすすめられてきました。
しかし、そのためにかえって水を飲みすぎてしまうことも、現実に起きてきました。水を飲みすぎれば、 胃の具合が悪くなるだけでなく、最悪の場合には低ナトリウム血症(水中毒)になり、重篤な場合には死に至ることさえあります
マラソンや駅伝でのアクシデントの原因が全て「脱水」、という誤解
マラソンや駅伝で極度に疲労し、足取りもおぼつかない状態におちいることがありますが、決まって原因にあげられるのが「脱水」です。
しかしながら、 このようなアクシデントは外見上の症状は同じでも、熱射病、低血糖、低体温症、水中毒などさまざまな疾患によって起こります。
特に水中毒の場合であれば、脱水とは正反対に、水の飲み過ぎが原因でこのような虚脱状態になります。また、その発症率も決して低くはありません。アクシデントの原因が全て脱水にあるという誤解が「レース中できるだけ多く水を飲むべき」という考えを後押ししてきたのではないかと思われます。
3.熱中症・熱射病対策には水分補給が必須
炎天下、激しい運動を続けたり、立ちっぱなしの状態が続いたりすると突然たおれて意識不明の状態におちいることがあります。 いわゆる熱射病・熱中症といわれるものです。 体内の水分は消化された栄養分を体中に運んだり、 体温調節などの働きをしています。気温が高くなると汗を出して体温を正常に保つよう調節し、さらに運動すると体熱活動は活発になり、汗を出して体温調節をしようとします。
汗の中には水分と一緒にナトリウムやカリウムなどの栄養素が含まれています。 これらの栄養素は微量ですが体液を正常に保つために働いています。体液のバランスを保つためには、運動量やまわりの環境にあわせて水分をこまめに補給していかなければなりません。
汗の量が多すぎて、水分補給が間にあわないと脱水症状をおこしてしまいます。脱水症状のとき、多量の水分を与えると細胞組織内外のナトリウムやカリウムのバランスを崩すおそれがあり、筋肉のけいれんをおこすこともあります。
体重の約2/3は水分ですが、そのたった10パーセントが失われると意識を失います。 そのような状態にならないように、失われた水分をこまめに補給できるように常に準備をしておく必要があります。 現在では非常に多くの種類のスポーツドリ ンクが発売されています。
お医者さんも汗をかいたらスポーツドリンクを飲むようすすめています。市販のスポーツドリンクにはナトリウムやカリウムなどのミネラルや糖質、 ビタミン類が含まれています。それらは汗として失われる成分です。
胃腸での水分吸収速度は、体液よりやや低張液のときに、はやく吸収されるといわれています。ですから多くのスポーツドリンクは、浸透圧が体液よりやや低く調整されています。 スポーツドリンクは、アメリカのフットボール選手たちの体憩時間に飲ませる水分補給のための飲料として開発されたといわれています。
しかしスポーツドリンクといっても種類が多く、糖分を7パーセントも含んでいるものなど、いろいろありますから糖分量などをよく確かめる必要がありそうです。
スポーツドリンクの一般的な飲み方でいわれていることは、 ハイボトニックタイプ(低張性)で、糖分は2.5パーセント以下のものを選ぶ。
冷やして飲みやすくする。 温度は8~13℃くらい。 運動前30分くらいに、 コップ1~2杯程度で飲みすぎない。運動中は10~1分間隔で、コップ半分1杯くらい。 運動後、 適度な塩分のある食事と汗で失われた水分を補う。 運動時間がマラソンのように長時間にわたる場合、スポーツドリンクはとても大事な役割をはたします。
のどの渇きをいやすために、 口あたりのよいジュースや清涼飲料水をペットボトルで飲んだりしてはいけません。 スポーツドリンクに比べ、糖分量が10パーセントくらいはあります。 ペットボトルは飲む量が限定されていないために、 つい飲みすぎてしまいます。
一般成人が1日にとってよい糖分量は90gまでといわれていますが、飲めば100gは越えてしまいます。 スポーツドリンクの中にも糖分量が7パーセント以上のものもありますので、 よく調べて飲む必要がありそうです。 成長期にある子供たちは、 新陳代謝が活発なので、 水分欲求がとくに強いようです。
甘いジュースは口あたりがよいので、がぶ飲みをすると満腹感もあり、食事のときに食べられなくなり、悪循環を繰り返します。 栄養のバランスがくずれ、カルシウム不足になり、骨がもろくなり、さらに疲れやすい、 目覚めが悪い、肩こりなどの症状がでてきます。 水分の補給にはくれぐれも気をつけて、ペットボトル症候群にならないようにしましょう。
4.飲み過ぎには水中毒の危険も!
これまで水の摂取の重要性を説明してきたが逆に大量摂取は水中毒を引き起こす可能性もある。水中毒とは汗をかいて塩分を失った状態で水分を大量に摂取することにより、血液中のナトリウム濃度が低下し、重大な障害が起こるという。防ぐには塩分も同時に摂る必要がある。しかし脱水症状も水中毒も正確な数値など決まっていない。個々の体重や体調、体内の吸収量によっても変化するからです。トレーニング中は自らのベスト量を探り、レースに備える努力をしたい
水分不足になると危険なことも!
体温を調節するために体は大量の水分を失うマラソン完走後に体重を計ってみると、スタート前に比べて3~4kg減っていることはよくあるそうです。もちろんグリコーゲンや脂肪といったエネルギー源も減少しますが、減った重量の大部分は水分です。
ランニングによって水分が失われるのは、体内で生じた熱を逃がすために、多量の汗をかくからです。汗をかくとそれが乾く時に気化熱を奪って行ってくれますから、ランナーは自らの体温を正常範囲に保つために、十分に汗をかく必要があるわけです。
汗の量はランニングの速度が速ければ速いほど、気温が高ければ高いほど多くなります。
20年ほど前までは、水分をたくさん取ると汗をかき過ぎそれが疲労につながる、といわれていました。今どきこんなことを信じている人はいないと思いますが、もしマラソンのレース前やレース中の水分補給が不十分だと、ランニングスピードを低下させるだけでなく、大変危険な状態を招くこともあります。
汗によって体重のわずか2~3% (体重60kgの人で1.2~1.8)の水分が失われるだけで、体温が上昇し、運動機能が低下してきます。
また、気温の高い日のマラソンで、水分不足があまりひどくなると、体温が急上昇し、熱中症を起こす危険があります。こうなると意識がはっきりしなくなり、フラフラになって倒れ、生命を失う危険すらあります。
マラソンでは、いい記録を出すためにも、安全にゴールするためにも、水分を補給することが非常に重要です
水分を体重の1%(50kgで500g)失うと、体温が約0.3℃上昇。吐き気、めまいなど熱中症の兆候があらわれたら、すぐに運動を中断して水分補給を、意識が朦朧としたら、生命の危険をすらあります。
5.レース中の水分補給の適量は「喉の渇き」に応じた量を!
マラソンレース中の水分補給量は、 ランナーの発汗量に見合った量である必要があります。ただし、発汗量は走速度、体型、気象条件などによって大きく影響されます。したがって、発汗量に見合った適量と言っても、 これを一律に数値で表すことには無理があります。
個人の特性に応じた水分補給の適量を知るには、客観的数値に頼るより、むしろ主観、すなわち「喉の渇き」によって判断する方法が推奨されています。この方法なら、深刻な脱水におちいることなく、同時に飲みすぎにもならないと考えられるからです。
どのくらい給水するかは数値で判断するより、そのときの「喉の渇き」やコンディションによって判断することをおすすめします
発汗量を知る
それでもやはり、 自分の発汗量は数字で知っておきたいところです。マラソンレースでの発汗量は、次の方法で簡単に予測できます。
マラソンのレースペースで1時間走を行い、前後の体重をはかります。その体重差すなわち体重減少量がおよその発汗量(1時間当たり)になります。
発汗量 = 体重減少量= 走行前の体重―走行後の体重
途中で飲み物をとれば、その量を加えます。
発汗量 = 体重減少量+飲水量
走った時間が1時間ではなかった場合、1時間当たりの量に補正します。
発汗量 = (体重減少量+飲水量)× 走行時間(分)÷ 60(分)
補給量を数字で示せば
体重管理は苦手だが、ともかく水分補給量のおよその数値を知っておきたい場合、 1時間当たり400~ 800mlを目安にしておけば良いでしょう。ただし、以下の条件に応じて適量を選択します。
体の大きなランナー、記録の良いエリートランナー、気温の高い場合など
→多めの量:給水所でカップ半分以上(100~ 150ml)
体の小さいランナー、記録の遅い市民ランナー、気温の低い場合など
→少なめの量:給水所でカップ半分以下(50~ 100ml)
脱水の程度を知る
レース中あるいはトレーニング中の水分補給量は、必ずしも発汗相当量である必要はなく、多少不足しても構いません。
その不足分、すなわち脱水率が2%程度におさまっていれば、その時の水分補給量は適量だったと判断できます。脱水率が3%をこえているようであれば、水分補給は不足していたと言えます。
逆に、走った後に体重が増え、脱水率がマイナスになった場合は、明らかに水の飲みすぎであり、十分注意しなければなりません。
脱水率は次の式で計算します。(飲水量を加えない)
脱水率(%)=体重減少量÷走行前の体重×100
6.あらかじめエネルギー補給地点を決めておく
マラソン大会には、レース中に補給ができる場所としてエイドステーション(大会主催者が設置している給水所)と、私設エイド(一般の応援者や地元のボランティア)があります。
フルマラソンや長距離を走っていると体のエネルギーを使い切ってしまいます。それほどマラソンは激しい運動です。なので走っている間もエネルギーを摂り続ける必要があります。
公式のエイドでは補給できるものをなるべく補給します。ほとんどの大会では給水や給食のタイミングについて計算しておかれているのでリズムよく取れるようになっています。
それ以外にもポーチに補給用のエネルギー系ゼリーを入れておき、自分で10km地点、20km地点などと補給ポイントを決めておくとよいでしょう!
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