マラソンランナーが不足しがちな栄養素と毎日の食事注意点
1.マラソンランナーに不足しがちな栄養素
私たちランナーは、気楽に10キロも20キロも走り、それを日常の何でもないことだと思っています。マラソンに向けてトレーニングしている時期なら、30キロ以上走ることだってあります。しかし、よく考えてみるとこれはなかなか大変なことで、ごく普通の生活をしている人たちに比べれば、運動量ははるかに多くなっているのです。そのため、普通の食事をしていると不足する栄養素が出てくる可能性があります。
不足しやすい栄養素について、次に解説していくことにしましょう。
・ビタミンB1
・ビタミンB2
・カルシウム
・カリウム
・鉄
・ビタミンB1……ランニングを行う時には体内でエネルギー源を代謝(燃焼)させますが、ビタミンB1は主に糖質(グリコーゲンなど)を燃焼させる時に使われます。
したがって、ランニング量が多い人ほどたくさん必要になります。不足すると最大酸素摂取量やATポイントが低下するともいわれているほどで、ランナーにとっては非常に重要なビタミンです。米や麦の胚芽に多いので、全粒パンや胚芽米が勧められます。レバー、豚肉、牛乳豆類などにも豊富に含まれています。
・ビタミンB2……糖質や脂肪を燃焼させてエネルギーを作り出す際に必要になるビタミンです。やはりランニング量が多くなるほど必要量が多くなり、不足するとランニング能力が低下するといわれています。卵黄、レバー、胚芽、肉、魚、牛乳、緑黄色野菜などに豊富に含まれています。
・カルシウム……骨の成分になるのはもちろんですが、筋肉の収縮活動にも影響を及ぼします。筋肉がけいれんするのを抑制する効果もあります。
したがってランナーにとっては非常に重要な栄養素なのですが、汗とともに体外に捨てられてしまうので、ランナーは普通の人の2倍近く(1000~1200 程度)摂取する必要があるといわれています。牛乳、小魚、緑黄色野菜に豊富です。特に牛乳や乳製品のカルシウムは利用率が高いので、これらを十分に取ることが大切です。
・カリウム……心臓や筋肉の働きに関係するミネラルです。やはりランニングによって大量の汗をかくことで、不足状態を招きやすくなります。不足すると強い疲労感を覚えたりします。野菜類、果物類、特にバナナ、すいか、柿などに豊富です。
・鉄……赤血球の成分となる物質で、不足すると貧血が起こります。赤血球は酸素を運搬する働きをしますから、これが少なくなるとマラソンの成績は明らかに低下してしまいます。
ランニングをしていると、着地のショックなどでも赤血球が破壊されますし、汗とともに鉄が捨てられるため、貧血が起こりやすくなります。レバー、牛肉、マグロ、カツオ、青菜類、ヒジキなどに多く含まれています。特に動物性食品の鉄分は利用効率が高いので、貧血予防に有効です。また、鉄はビタミンCと一緒だと吸収率が高まります。
以上のような栄養素は、ランニング量が増えれば増えるほど、必要量も高くなります。
マラソンに向けて走り込むような時には、特に不足しないように気をつけてください。これらが不足すると、いくらハードなトレーニングを行っても、それを結果に結びつけることができなくなります。
2.1日25品目の食事を
厚生省は「1日30品目の食事」を提案しています。いろいろな物を食べていれば、そこそこバランスが取れるだろう、という発想です。誰にでもわかるし、実行しやすい目標だといえます。
たぶん統計的な調査をすると、多品目の食事をしている人ほど栄養のバランスがいい、という結果が出るのでしょう。
ところが最近の調査によると、1日30品目食べている人は、現実にはほとんどいないのだそうです。厚生省の目標がちょっと高過ぎたのでしょう。
それにこの目標は「いろいろな物を食べよう」という主張を、具体的数字に置き換えただけのものですから、30という数字には何の根拠もありません。もっと少なくても栄養のバランスが取れていれば問題はないわけです。
そこで、とりあえずは25品目ぐらいを目標にするといいのではないかと思います。25品目をクリアしているのでも少数派だそうですから、そこに入れば栄養のバランスはまずまずと考えられます。
1日3回食べる
人間が1日3回食事を取らなければならないという生理学的根拠はあまりないと思いますが、1日2食の人と3食の人を比べると、3食の人の方が栄養のバランスがいいとい調査研究はあります。
多忙や二日酔いといった理由で朝食を抜いてしまうことが多い人は、なるべく3回食べた方がいいでしょう。特に一人暮らしの独身者に朝食を抜いてしまう人が多いのですが、ランナーだったら、せめてコーンフレークスに牛乳をかけてトマトをかじるくらいの朝食は取るべきだと思います。
野菜を積極的に食べる
この飽食の時代を生きる私たちに、たんぱく質、炭水化物、脂肪の不足はまず起きません。
たとえファーストフードとコンビニエンスストアに頼った食生活をしていても、まず大丈夫です。不足しやすいのがビタミンやミネラルであることは、国民栄養調査でも明らかになっています。
このウィークポイントを克服する効果的な方法は、野菜を食べることです。
料理に当てる時間が短い人ほど、外食が多い人ほど、野菜の摂取量が少なくなる傾向があります。だからといって、もっと手間をかけて野菜の料理をつくりなさいという提案は、たぶんあまり意味がないでしょう。
そういうことができる人は、すでにそれを実行しているでしょうから。ここでは、やはり最低限の提案として、冷凍野菜と野菜ジュースの利用を勧めたいと思います。
日本型食生活のすすめ
これは米が余って困った農林水産省が考え出した標語なのですが、栄養の点から考えも、そう悪くない提案だと思います。ごはんとみそ汁に、肉や魚を中心とした主菜、野菜を中心とした副菜を加えると、栄養的にバランスの取れた食事になります。
また、ごはんを中心にすることで、ランナーに必要な炭水化物が十分に取れるメリットもあります。たんぱく質が10~15%、脂肪が20~25%、炭水化物が60~70%になるのが理想的な長距離ランナーの食事だといわれていますが、現代の日本人の食事の平均値はほぼこの範囲に入るようです。
ただ、徐々に脂肪が増えて炭水化物が減る傾向がありますから、ランナーはしっかりごはんを食べることが大切です。
以上がバランスのいい栄養を取るためのコツです。マラソンを走るためには、まず身体を健康状態に保たなければなりません。そのためには、日々の食生活を充実させることが必要だと思います。
3.練習量を増やすなら栄養にも注意
さて、ウルトラマラソンに出るための練習についてですが、毎週やる必要はありません。ウルトラは13~14時間も走る特殊なものです。普段そんなに走るなんてあり得ない。ただ、体に長時間走る経験を覚え込ませておいたほうがいいので、年に3回ぐらい5~6時間走ってみてはどうでしょう。レースを一本走らなかったとしても、やったほうがいい。ただし、負担も相当かかります。それに向けて体調も十分に整えてやったほうがいい。
ウルトラを目指して練習量が増えてくると、栄養にも注意しなければいけません。タンパク質やカルシウムなどをとるために大豆・小魚、それに鉄分の多いほうれん草、ひじき、レバーなどを積極的に食事に取り入れてほしいですね。毎朝、納豆にちりめんじゃこをまぜて食べるのもいいです。ビタミン類も大切で、サプリメントが充実していますから補助的に使ってみてはどうでしょう。
速く走れるようになる魔法の料理はありませんが、毎日のバランスのとれた食生活と練習の積み重ねによって、結果的に速く走れるようになるのです。この「バランス」を考えたとき、お米は理想的な主食といえます。
パンと違って、和洋中どんなおかずにも合い、不足しがちな栄養素がとりやすくなります。パンを主食にすると、フライやソテーに走る、痩せるためのランナーの食事と栄養など、おかずがワンパターンになりがちなパンに合わせて油を使ったメニューが多くなってきます。
また、食事は1日3食、決まった時間にとることが望ましい。もし、決まった時間に食事ができなくても、欠食しないことが重要です。仕事で忙しいときなど変則的な食事をしていると、食事量は減っていても、結果的に太ってしまいます。それは、欠食することによって、逆に体がエネルギーを貯め込もうとするからです。欠食で体が必要以上のエネルギーを欲してしまうと、せっかく走ってエネルギーを燃焼させても、あまり意味がありません。
また、絶食や欠食によるダイエットは、筋肉や骨(骨密度)を減らし、体重は減っても体脂肪率を増やしてしまいます。体重が増えても、それが筋肉であれば問題はありません。けれど、体脂肪を増やしてしまっては、ダイエット失敗です。
朝起きるとともに人間の体はエネルギーを使おうとします。だから、朝食をしっかりとることはまったく問題ありません。朝とったエネルギーは燃焼されやすい。けれど、夜、寝る前の体はエネルギーを溜め込もうとするので、燃焼されることなく食べた分だけ取り込みます。
それでも決まった時間に食事がとれないという方は、牛乳を飲んだり、市販されているゼリー状の栄養飲料などを飲んだりして、完全な欠食を避けるように。また、夜遅くの食事を避けて、朝、空腹で自然と目が覚めたときに食事をします。
ランナーに必要な炭水化物は、ビタミンB群がないと燃焼できないランナーにとって、炭水化物、タンパク質、脂質、ビタミン、ミネラルという、いわゆる五大栄養素の中でも、炭水化物、タンパク質、ビタミンは絶対必要です。
炭水化物、タンパク質、脂質はエネルギー源となるのですが、それだけでは意味がありません。炭水化物はビタミン、特にB群と呼ばれるものを一緒にとることによってはじめてエネルギーとして燃焼することができるのです。
米は、炭水化物というだけでなく、燃焼させるためのビタミンも含まれているという点で非常に体にいい。ビタミンB群は、豚肉をはじめ玄米、うなぎ、豆類、納豆などに豊富に含まれています。
また、走ることは体にとっては一種のストレスになります。そのストレスに対抗するためにはビタミンCが必要です。毎食、デザートに柑橘系の果物をとって一日の必要量を摂取しましょう。キャベツの千切りや大根おろし、じゃがいもなどのいも類にも含まれています。また、鉄分と一緒にとることによって、貧血の予防にもなります。
筋肉をつくる、筋肉が運動するときは、カルシウムとマグネシウムが必要となるので、特に筋力トレーニングの前後に牛乳を飲むことをすすめます。トレーニングが終わる頃には破壊された筋肉細胞はすでに再生に向かっているため、それに必要なミネラルを体に与えると効率的です。煮干しなどの小魚で味噌汁のだしをとるだけでも違います。
4.グリセミックインデックス(GI)
炭水化物の性質を示す指標の1つとしてグリセミックインデックス(Glycemic lndex:GI)があります。GIは、インスリン分泌への刺激の強さを白パンを基準(100)として示しています。インスリンは食事や運動によって上昇した血糖を下げて、血液中の糖濃度を一定に保つ働きをします。
インスリンの分泌が刺激されることによって摂取した食品の成分は筋肉や脂肪組織に取り込まれやすくなりますから、 この性質を考慮すれば筋肉におけるエネルギーの蓄積や疲労の回復を促進することができます。
GIは一般的には多糖類よりも二糖類や単糖類で高く、パスタや玄米と比較して、コーンフレークやカステラなどの柔らかい食品で高くなります。
また、砂糖入りの飲料は果糖の多い100%フルーツジュースよりもGIが高いため、この飲料の糖分は筋肉や脂肪組織に取り込まれやすくなります。
ところで、GIは調理の方法によっても変化します。米を柔らかく調理したお粥は租借の必要な玄米よりもGIが高くなります。労働や運動などの活動の開始までに時間がない時にはGIの高い食品を摂取するようにします。
一方、GIの低い食品は時間をかけてエネルギーに変えることができます
高い(85以上)
フランスパン
食パン
コーンフレーク
もち
マッシュポテト
ベイクドポテト
ゆでじゃがいも
にんじん
スイートコーン
レーズンブドウ糖
麦芽糖
しょ糖(砂糖)
はちみつ
シロップ
せんべい
中等度(60~ 85)
こ飯(精白米)
スバゲティー
全粒粉パン
ピザ
ライ麦パン
クロワッサン
ロールパン
フライドポテト
焼きさつまいも
ゆでとうもるこし
かぼちゃ
ゆでグリーンピース
すいか
ぶどう
オレンジ
オレンジジュース
パイナップル
バナナ
パパイヤ
メロン
キウイ
マンゴー
ジェリービーンズ
ドーナツ
ワッフル
コーラ
マフィン
クッキー
ボップローン
ポテトチップス
アイスクリーム
チョコレート
低い(60以下)
こ飯(玄米)
オールブラン(シリアル)
牛乳
スキムミルク
低糖ヨーグルト
大部分の豆類
ピーナッツ
リンゴ
リンゴジュース
グレープフルーツ
グレープフルーツジュース
あんず
洋ナシ
さくらんぼ
もも
プラム
バナナケーキ
スボンジケーキ
乳糖
果糖(フルクトース)
この記事を見た人は、下記にも注目しています!