目次
- 1.レースペースランニングは必須
- 2.レースペースランの目的
- 3.レースペースランの方法
- 4.レースペースランの留意点
- 5.ペース走
- 6.距離走と時間走
1.ペースランニングはマラソンレースに近いトレーニングでランナーに必須
長距離やマラソンのトレーニング手段は多彩です。また、用いられる方法と使用頻度は種目によって異なってきます。マラソンランナーは、 トレーニングの中心がロングランかもしれませんし、10kmをねらいとするランナーは、インターバルトレーニングやLTペースのトレーニングが中心かもしれません。
しかし、どの種目のランナーも実施しなければならないトレーニング手段(強度)があります。それは、 レースペースかそれに近いペースランニングです。これは記録改善のためには必須のトレーニングです。
トレーニングの原理の1つに「特異性の原則」というものがあります。その意味は、「体力の特別な構成要素を高めるには、トレーニングでその構成要素にストレスを与えなければならない」というものです。
レースペースで走ることは、 レース中に用いられるエネルギーシステムを発達させ、そのスピードに応じたランニングテクニックを高めることにつながるのです。
例えば、マラソンの記録改善にはゆっくりしたペースのロングランだけでは不十分であり、目標とするマラソンペースでのトレーニングが不可欠だということです。
2.レースペースランの目的
・種目におけるペースで走ることにより、それぞれの種目に必要とされるエネルギーシステムが発達します。3000~5000mのレースペースは、最大酸素摂取量で走れるスピードやその持続能力を高めますし、マラソンのレースペースは呼吸循環系能力やLTスピードをも改善します。
・レースペースのトレーニングにより、 リラックスして速く走ることが学習でき、不必要な腕と脚の動きが除かれます。
・不必要な動きがなくなると、 レースペースに最も望ましい神経―筋機能の活性化と協調が起こり、 ランニングの経済性(ある速度で走行中のランナーの、体重に関連して消費される酸素の量。同じ速度で走っていてもかなりの個人差が見られ、 この値が低いランナーの方が、経済性に優れていると判定されます。
・その結果、 レースペースでのランニングが気持ち良く感じられるようになります。また、より速いペースで走ることが可能になります。
3.レースペースランの方法
このトレーニングは、種目の距離が短くなるほど、強度が高負荷となります。短い距離のレースペースでは、体は無酸素的状況で走ることを教えられ、スピードを生むために必要とされる脚の速筋線維を活性化することになります。
逆に、マラソンのレースペースは、中程度の負荷であり、血中に乳酸が蓄積するか否かの強度です(主観的には少し楽)。この時、個人差もありますが、遅筋線維に加えて、速筋線維も動員される速度になります。
このような生理学的背景から、 トレーニングの方法はかなり幅広くなり目標とする種目によってその内容を考慮する必要があります。
また、市民ランナーにとつては、5~ 10kmのペースは高負荷となり、心理的には取り組むことが嫌になるトレーニングとも言えます。目標とするマラソンペースでのランニングを上限の速度になるようにすると良いでしょう。
4.レースペースランの留意点
ここで、このトレーニングの留意点を整理しておきましょう。
・ペースは目標とする種目のタイムで決まります。そのペースで走る距離は、一般的には2000~ 5000mで、 自分の目指す種目によって変わります。たとえば、10kmとフルマラソンでは次のようになります。
・10kmを目標→2km× 2~ 3回
・マラソンを目標→5km× 2~ 4回(かなり本格的な内容です)
・本数の間のリカバリーは、走行距離と体カレベルにもよりますが、運動時間を1とすると、その1/2~ 1/3の時間にします。
・休息が短く感じたら、 もう一度、同じ速度で走れるという感覚(フィーリング)まで待ちます。休息の仕方としてはウォーキングやジョギングにストレッチも加えると良いでしょう。
・トレーニング頻度は競技レベルにもよりますが、10日から2週間に1回で十分でしょう。
・心理的にきついトレーニングなので、途中でペースどおりに走れなくなったら、 ジョギングに切り替えることも考えに入れておきましょう。
このトレーニングは、間近に迫ったレースヘの準備として、生理学的にも心理的にもすばらしい効果を与えてくれるでしょう。
5.ペース走
低強度・低速度でのジョギングやLSD(ロング・スロー・ディスタンス)などでは余裕のあるランニングが楽しめますが、中強度のペース走やレースペースでのペース走ではよりハードなレース向きの手段となります。またペース走は、一定ペース走が基本となりますが、前半ゆっくり走って、後半徐々にペースを上げていくビルドアップ走やスピードの上下動を意図したペース変化走などさまざまなペースバリエーションが楽しめます。
また、距離とペースを組み合わせ、短距離や中距離を休息を挟んで複数回反復するインターバル走やレペテイション走などの方法も多く用いられています。
6.距離走と時間走
ランニングは距離を目安に走るか、時間を目安に走るかで微妙にその特性が異なってきます。距離走は具体的なフィニッシュ地点が定まり、その距離をより速く走りきろうとする意識が働くため、フィニッシュが近づくにつれてペースが上がり強度が高くなる傾向があります。
一方、時間という抽象的なゴールを設ける時間走では、より安定的なペースを長い時間持続するのに適しています。そのため、ベテランランナーや走行距離の多いランナーは、時間走と距離走を巧みに使い分けて走り込んでいます。
短距離から中距離、長距離、 さらに超長距離(ウルトラマラソン)へと距離が長くなるほど全身持久力(スタミナ)が要求され、短距離種目ほど高いスピードが必要になります。
時間走でも12分、40分、60分、90分間走などがよく用いられますが、 6時間走、24時間走、 6日間走など超長時間走も実施されています。
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