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昔と現在の運動時水分補給の違いとスポーツドリンクの生い立ち 

スポーツドリンクの生い立ち1.スポーツドリンクが生まれるまで
トレーニング中は水を飲まない。のどが、渇いても極力飲まない。

水を飲まないで走ってこそ、競技力も精神力も高まる。昔はそれが当たり前の時代がありました。

飲み水についての我慢は、なぜ、固い思い込みになっていたのでしょうか。

ひとつ考えられるのは、社会的なストイシズム、わけても軍事に顕著な鍛錬精神主義との関連です。
スポーツの歴史に、軍事との相乗り場面は珍しいことではありません。

飲み水が不足する戦場はいくらもあるんだ、だから、普段から飲み水の我慢に慣れておけ、といった軍隊の論法がありました。旧日本陸軍の行軍でもみだりに水を飲むことは許されません。

そうした行軍思想が軍事教練、ひいては学校体育や社会人スポーツに持ち込まれ、いたずらに根性論やら形式的管理やらと結び付くことによって、運動中の飲み水についての画一的な自制が広まってしまったのかもしれません。

ところが、運動中の水を我慢しろというのは、日本だけにあった習慣ではないということです。
日本体育協会スポーツ科学研究室長の伊藤静夫さんによれば、欧米でも同じことだったみたいです。

しかし、戦後しばらくして、飲み水についての新しい波が、米国スポーツ界から沸き起こった。1965年、熱中症で死ぬアメリカンフットボール選手が相次ぎ、20人を数えるまでになった。選手は2時間のトレーニングで平均2.5リットルの水分を汗として放出する。なのに飲み水を自制し続けたため、水分欠乏から汗腺疲労を起こし、これが熱中症の原因になったのです。

今でこそ水分補給が当たり前の事態となっており、熱中症対策はとても大切だと認識されています。
「選手たちを熱中症の危険から救おう」
と、水分補給飲料の研究が、フロリダ大学腎臓電解質研究所の博士によって進められました。

成果としてのアイソトニック飲料は、フロリダ大学フットボールチームのニックネームである「ゲーター(ワニを意味するアリゲーターの略)」と飲み物を意味する「エード」を重ねて「ゲータレード」と名付けられ、68年、市販に供されました。これが世界で初のスポーツドリンク誕生なのです。ちなみに、ゲータレードは72年ごろから、日本でも粉末タイプが輸入販売され、80年以降は雪印乳業より発売されています。

こうした飲料の開発と並行して進んだ運動生理学者の研究の流れとしては、69年、南アフリカの二人の学者がマラソン選手の体重と直腸温を測定し、その結果、脱水しているものほど直腸温が高くなる観察データを得ました。そこで脱水が体重の3%を超えないような水分補給の重要性が指摘されたのです。

このころから、ようやく日本でも水分補給の大切さが叫ばれるようになりました。先のゲータレードに続き、大塚製薬のポカリスエット(80年)、サントリーのNCAA(81年)、コカ・コーラのアクエリアス(83年)などと競って発売された液状タイプのスポーツ飲料市場は、折からのランニング大衆化とリンクして活況を呈し、水分補給の理解を加速していったのです。現在ではたくさんの種類のスポーツドリンクが発売されています。




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