目次

スポーツ医学の進歩がめざましいのでスポーツドクターに治療は任せよう

1.スポーツ医学の進歩
スポーツ医学の臨床はどんどん進歩し、診断・治療も日進月歩です。昔はMRIも研究段階で、現在のような鮮明な画像は想像もできない状況ということもありました。

前十字靭帯損傷の診断は、徒手テストと診断のための関節鏡検査に基づいていました。治療も腸胚靭帯を用い、関節を大きく切開しての靭帯再建が行われ、 1カ月間ぐらいのギプス固定がされていました。

それが現在はMRIで容易に診断ができ、小切開のみで関節鏡で見ながら膝の内部で操作する靭帯再建が可能になりました。再建に用いる材料の選択も、組織の強度に基づき膝蓋腱や半腱様筋腱が用いられ、安定性が増し、復帰までのリハビリテーションスケジュールも標準化されてきました。

このような専門的な情報が、現在は本やインターネットで入手しやすく、選手たちもある程度の予備知識を持ってドクターと話ができるようになっています。

その結果、私たちはいつ手術をすれば、いつ頃、どの程度の復帰が可能かを、明確に選手に説明できるようになり、選手は競技や仕事、学業のスケジュールを考慮して計画を立てやすくなりました。

スポーツ医学の役割はこれまで、スポーツによって発生する障害や疾病の診断と治療が主と思われていましたが、徐々に予防に力が注がれるようになってきました。

つまり、発生した問題を解決するだけではなく、問題を発生させないための取り組みが活発に研究されています。

各傷病の予防の項で少しずつ記してありますが、傷病が起こりやすい状況、傷病を起こしやすいタイプの選手が明らかにされてきて、それらの情報から予防手段が考案されています。

プロテクター(防具)やブレース、用具の開発や改善、競技動作やフットワークのスキルアップ、場合によっては危険なプレーを反則とするルール改正などさまざまな方面の予防手段が:現実に用いられています。

最も重要な選手の体については傷病を発生しやすい危険因子を検出し、コンディションをも把握するメディカルチェックが浸透しつつあります。このように、安全で高いパフォーマンス発揮を支えることに、スポーツ医学は貢献しています。



2.スポーツドクターのかかり方
ご存じの方も多いと思いますが、日本には日本体育協会公認スポーツドクターと日本医師会認定健康スポーツ医、さらに日本整形外科学会認定スポーツ医という3種類のスポーツ医の資格が存在します。

競技スポーツ選手に対する診断、治療、競技の医事運営やメディカルチェックは、主に日本体育協会公認スポーツドクターが、健康スポーツのための指導や処方、運動可否の評価は、日本医師会認定健康スポーツ医が担当します。

スポーツによって発生するケガの診断・治療には、日本整形外科学会認定スポーツ医が専門医として位置づけられています。

整形外科は部位別に学会が発達しており、肩の専門家、膝の専門家、というように各部位のスペシャリストがいます。

どういう医師にかかるのが便利かは、競技レベル、ケガの部位や重症度などにより異なります。学校スポーツでのケガでは地域のスポーツドクター(スポーツ外来のような診療窓口)に授業後に見てもらえれば便利です。

手術が必要ということになれば、ケガの部位の整形外科専門医に意見(セカンドオピニオン)を聞くことも有用です。

スポーツ選手の貧血などの内科疾患や無月経のような婦人科的問題については、整形外科のスポーツ外来ほど専門の窓口は多くありません。地域体協のスポーツ医科学委員会に問い合わせると紹介してくれるでしょう。

なお、スポーツドクターを検索する方法として、日本体育協会ではホームページ内に検索ボックスがあります。これにより日本体育協会公認スポーツドクターの情報が得られます。

また、日本整形外科学会では認定スポーツ医をホームページ上から地域、専門部位、得意な競技種目などをもとに検索できるようになっています。

さらに、競技団体ごとでも医科学委員会の委員であるドクターやその競技の選手の治療を専門的に引き受けてくれるドクターのリストを公開している場合があります。まずはインターネットで調べてみてください。


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