目次

速筋優位タイプと遅筋優位タイプの練習プログラムは違う

速筋優位タイプと遅筋優位タイプの練習プログラム
1.速筋優位タイプと遅筋優位タイプ
「速筋」と「遅筋」という単語は、経験豊かなランナーなら一度は見聞きしたことがあるでしょう。

そもそも筋肉は「筋線維」という繊維状の細胞を無数に束ねたものなのですが、その筋線維には「速筋線維」と「遅筋線維」という2タイプがあるのです。

速筋線維は白い色をしているので「白筋」、遅筋線維は赤い色をしているので「赤筋」とも呼ばれます。
私たちのカラダには計600種類を超える筋肉があるそうですが、そのすべての筋肉は速筋線維と遅筋線維が混在したもの。そして、その混在比率には個人差があるので特徴をまとめました。

速筋が多い人の特徴
・筋肉が大きく、太くて瞬発力がある
・筋肉がつきやすい
・短距離選手

遅筋が多い人の特徴
・筋肉が細くスリムで持久力がある
・疲れにくい
・長距離ランナー

自分がどちらのタイプかは、厳密にいうと太ももの筋肉などから筋線維を採取して調べる必要があります。もちろん市民ランナーはそこまでできないので、手っとり早い考え方を紹介しましょう。

どちらかといえば子どものころから短距離走が得意だった人は速筋優位タイプ、持久走のほうが得意だった人は遅筋優位タイプである可能性が高いです。

マラソンの練習に当てはめていうと、スピードが要求されるインターバル走とスタミナが求められるロング走の得手不得手で判断できます。どちらかというとインターバル走が得意なら速筋優位タイプ、ロング走のほうが得意なら遅筋優位タイプと考えられます。

なかでも足腰から体幹にかけての筋肉に速筋の割合が高いのが速筋優位タイプ、遅筋の割合が高いのが遅筋優位タイプです。

速筋はその名の通り収縮するスピードが速く瞬発力に優れていますが、持久力に劣るという弱点があります。対照的に遅筋は収縮するスピードは遅く瞬発力に劣るものの、持久力に優れているという強みがあります。

端的にいうと、マラソンでは遅筋優位タイプのほうが有利です。

魚類を見ても広大な海を泳ぎ続けているマグロやカツオは赤身、つまり遅筋優位タイプ。回遊しないタイやヒラメなどの白身魚は、速筋優位タイプです。

目標達成のための基本的な考え方としては、「強みをさらに伸ばす」ということ。

速筋優位タイプはスピードをさらにつける練習、遅筋優位タイプはスタミナをさらにつける練習を中心にとり入れます。

筋線維に占める速筋、遅筋の割合は遺伝的に決められており、トレーニングなどによって後天的に変わることはないと考えられています。


2.速筋優位タイプ練習プログラム
レース3~2か月前

では早速、速筋優位タイプの練習法から紹介していきましょう。勝負レース3~2か月前のメニューは毎週固定です(1か月前からは毎週メニューが変わります)。

時間を要する練習は週末に入れていますが、仕事で週末休めない場合などもあるでしょうから、ライフスタイルに応じて適宜アレンジしてください。

プログラムを見るとわかるように、市民ランナーにはけっこうキツイメニューになっています。しかし、カラダの負担を分散させて効率的に走る「腹走り」であれば、このくらい練習しても故障するリスクは低いと思います。

平日のポイント(強化)練習は、水曜のインターバル走です(実施する曜日は適宜アレンジしてください)。

インターバル走は1km×6本、または3km→2km→1km。いずれもラスト1本はビルドアップをして追い込んでいきます。インターバル走にしてはペースはやや遅めですが、その分、ジョグでつなぐ休憩を1分と短めにするのがポイントです。

走行距離は計6km。距離が短い分、ウォーミングアップとクーリングダウンを20分くらいずつしっかりやるといいでしよう。
このビルドアップ走の代わりに、山走りをとり入れるのも効果的です。

ポイント練習以外のつなぎ練習はジョグ。このときにとり入れると効果的なのが「スピードプレイ」です。スピードプレイとは、速度に自由な変化を加えながら走る「変化走」のこと。もともとは「ファルトレク(野外走)」というスウェーデンのトレーニングがベースになっています。

ずっと同じスピードで走っていると精神的に飽きてきますが、ベースを自在に変えると飽きずに走り続けられます。それにずっと同じペースを守っているよりもカラダに刺激が入りやすいです。

スピードプレイは、軽くアップダウンのあるコースでのジョグ。上りで頑張り、下りで少し飛ばしてみるのも効果的です。

時間に余裕のある週末は、長い距離を踏みます。土曜は20~25kmのペース走、日曜は2~4時間のLSDです。

レース3~2か月前の段階では故障のリスクが少ない20~25kmでの「脚作り」と同時に、速筋優位タイプに不足しているスタミナも養います。


3.レース直前1か月
レース1か月前からは、毎週メニューが変わります。1週間ごとに練習を減らしながら、3~2か月前までのトレーニングで蓄積した疲労を抜いていきます。

レース本番のパフォーマンスは「走カー疲労」とシンプルに考えられます。3~2か月前までにきちんと練習を積んでおけば、練習量を減らしたとしても走力が落ちる心配はありませんし、疲労を抜くことでさらにパフォーマンスがアップします。

さて、レース4週間前の土曜は、30kmのレースペース走を行います。

これはレースのシミュレーションを兼ねていますから、レース本番のスタート時刻に合わせてスタートしてください。

そして走る前の食事やレース中の給水。給食、何km地点でどんなダメージが出てくるかといったポイントをチェックしておきます。

水曜の5km走ではレースペースより速いペースで追い込んで、レース後半の苦しい状況を作り出し、1分間の休憩を挟んで最後の1kmを可能な限り追い込みます。これによりレース後半、粘れるようになります。

3週間前の土曜は20kmのレースペース走、2週間前は10kmのレースペース走です。

水曜のポイント練習も距離を減らしていきますが、一度追い込んだ後、休憩を挟んで最後の1kmは可能な限り追い込みます。
2週間前のインターバル走は、休憩を2分に増やすことで負担を軽減してやりましましょう。

1週間前は基本的にはジョグで疲労回復に努めます。そしてレース2日前の金曜に1km×1、2本で最後の刺激を入れます。このときペースを速めてしまうと、疲労が残ってしまうので注意しましよう。


4.遅筋優位タイプ練習プログラム
レース3~2か月前

続いて、遅筋優位タイプの練習プログラムを紹介しましょう。メニューの基本的な枠組みは、速筋優位タイプと同じです。

速筋優位タイプとの大きな違いは、ポイント練習で遅筋優位タイプが苦手なインターバル走をやらないこと。持久力に優れる遅筋優位タイプの強みをさらに伸ばすため、ビルドアップ走を実施します。このうち1回を「山走り」にしてもいいです。

つなぎ練習のジョグは、できれば起伏のあるコースで、速度に自由に変化をもたせるスピードプレイでカラダに刺激を入れると効果的です。

週末のプログラムは、土曜に20~25kmのペース走、日曜は2~4時間のLSDです。

月曜は完全体養でもいいですが、アクティブレスト(積極的休養)の効果で軽く走って血行を促すと疲労が抜けやすくなります


5.レース直前1か月
レース1か月前からは1週間ごとに練習を減らして、蓄積した疲労を抜いてパフォーマンスアップを狙います。このあたりも速筋優位タイプと同じです。

4間前の土曜、レースのシミュレーションを兼ねた30kmのペース走をします。3週間前の土曜は20km、2週間前は10kmと、ペース走の距離を短くして疲労が溜まらないようにします。

平日のビルドアップ走の練習量も4週間前は15km、3~2週間前は10kmと徐々に減らしていきます。

1週間前は、ジョグメインに切り替えて疲労回復に努めます。そしてレース2日前の金曜に1km×1、2本で刺激を入れてレースに備えます


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