目次

1.ランニング学会はランニングの「より速く」から「より楽しく」を研究する

ランニングは、数多くのスポーツがあるなか、野山であれ、街中であれ、競技場以外でも場所を問わずに行われる稀有の種目です。

そうしたランニングの文化を研究する機関として、1989年、世界に例を見ない「ランニング学会」が、日本で生まれました。

ランニング学会の構成は、現在で正会員595人(うち女性90人)程の数があります。大学教授、体育助手、医者、運動生理学者などプロフェツショナルな研究者だけでなく、学生から市民のランナーまで会員の顔ぶれは多彩だが、「走ること」への愛着という点で共通しています。

このようにひとつのスポーツ種目だけで集う学会というのは珍しく、日本学術会議に登録されている学会のなかでも、ランニング学会は大変ユニークな団体なのです。

昔の日本はやたら馬車馬のように順位や記録を追っかけてばかりいる狭い効率主義ランニングが主流でした。その時のテーマは「より速く走るための要件」でした。

たとえば、一流ランナーのスタミナの根源は何か、素晴らしいフォームの技術的要素は何か、といったもので、そのための合理的なトレーニングについて、時間の経つのも頓着せず熱っぽく論議をするのが当たり前の時代でした。

「マラソンは努力だ、根性だなんていうけど、本当にそうなのだろうかと。練習の発想や仕組みを、精神主義から科学に置き換えることによって、多くのものが見えてくるんじゃないかと」
人はなぜ走るのか。

疑問はつきることはありませんが、高齢ランナーも若者と交じって普通に走っている光景から受けた感動とも重なり、ランニングは深いぞ、大きいぞと、ランニングをもっともっと知りたい、学びたいというモチベーションが膨らんでいったんです。

自由なランニングの発想が、日本にも上陸してくる。
定型と管理にとらわれないランニング。順位や記録では計れない自分探しのランニング。競走とも挑戦とも異質な癒しのランニング。

ランニングの多様化によって、中・長距離研究会にも衣替えの時が徐々にきています。一握りの高速ランナーを対象とした記録のための研究、勝つための研究から、市民ランナーも幅広く巻き込んだ多角的な研究がスタートします。

「より速く」を目的に掲げ、記録や勝つことをめざした合理的トレーニングのみならず、ここでは「より楽しく」「より健康的に」「より安全に」という目的が並列して重要な項目に浮上していきます。
こうしてランニング学会が誕生したのは、1989年4月2日のことなのです。


2.学会の問題点
日本ランニング学会でなく、日本という頭文字を付けないランニング学会の名前で、インターナショナルな視野の広がりをもたせようという気持ちで出発したのですが、やはり国内の視野に限られる傾向があります。

各国のランナーや学者との交流、情報交換なんかをもっと盛んにしたい。「トップアスリートも市民ランナーも区別なく走る姿が街の風景に溶け込んで海外では走りたくなるような道路、かけ登ってみたくなるような坂道がたくさんあります。

生活密着型スポーツの楽しさを知るうえでも、外国都市のあり方と市民の関係に日本が学ぶところは大きいのです。



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