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ランナーに起こる足の症状から原因を見つけて予防法を考える

障害
ジョギングを続けていると、避けることができないのが故障。初心者もベテランも、これに悩まされる。走ることは確かに楽しい。その反面、 トレーニングの方法を間違えていたり、体の手入れを怠ると、故障と仲よしになる。しかし、その故障を克服することで、走る楽しさが増し、ジョガーとしてさらに成長する。

故障の予防には、何よりも日ごろの入念なストレッチングとマッサージ、そして正しいフォームづくりが大切。また、やめる勇気を持とうとはよくいわれているが、様子がおかしいと思ったときは、 トレーニングを中止し、一刻も早く専門医の診察を受けるようにしよう。そのほうが結果的に、早くトレーニングに復帰することにつながるからだ。

ここでは、足の故障の症状と、その予防法を簡単にまとめている。それらにもし思い当たるふしがあったら、ひとりで思い悩まず、専門医に相談しよう。


1.つま先
つめがシューズに当たって痛い。
【症状】 つめの下に内出血があり、周辺の皮膚がはれる。
また、つめが変形し、そのため皮膚に傷をつけ、ばい菌が入って化膿する。
【原因】 つめがシューズの先端に当たり、長時間圧迫されることで、内出血を起こす。
放っておくと出血は固まり、黒つめになる。
【予防・治し方】 つめは常に手入れをし、また、つま先に余裕のあるシューズを着用する。化膿した場合は、医師の診察を受ける。


2.足の甲
ジョギング中に足の甲の痛みがひどくなってくる。
躙中足骨疲労骨折(ちゅうそくこつひろうこっせつ)
【症状】最初ははれが生じ押すと痛い。歩くときにも痛みが起きるようになったら要注意。足の甲を構成している骨が骨折している場合が多いからだ。
【原因】不自然なフォームによる硬い路面での走り過ぎ
クッションの悪いシューズの使用などが考えられる。
【予防・治し方】 トレーニングコースの路面、シューズを確認しよう。疲労が過度になっていないか、練習量のチェックもしてみよう。専門医に診察してもらって、テーピングやアーチサポートを処方してもらうこと

足底
土踏ますが痛いは足底筋膜炎(そくていさんまくえん)
【症状】 着地のときにかかとの内側、土踏まずの部分が痛くなる。ひどくなると朝起きたときにも痛みを自覚するようになる。
【原因】 ふくらはぎの筋肉の柔軟性が足りないことや、足全体の筋力の低下や疲労など。それらが足底筋に負担をかけている。
【予防・治し方】 1~ 2週間安静にし、足底やふくらはぎのストレッチング、足首の周りの筋力強化などを行なう。練習量を抑えたトレーニングを再開し、症状が再発するようなら専門医の診察を受ける。テーピングやアーチサポートを処方してもらう。



3.かかと
小石を踏んでからかかとが痛い
踵骨部挫傷
【症状】 ランニングの着地のときに、硬いものを踏みつけたのが原因で、かかとの部分に出血やはれが生じる。
【原因】 かかとの部分は皮膚や皮下脂肪が厚く、クッションの役割をしているが、これが強いショックで破壊されて症状が出てくる。
【治し方】ケガをしたらすぐに氷で冷やすこと。そして出血やはれを抑えるために、氷の上から包帯で圧迫する。
2~ 3日間はこれで様子を見る。痛みがなくなるまでは、なるべくかかとを着けないようにし、 7~ 10日ぐらいの安静期間をおいて、 トレーニングを再開する。


テニスシューズでジョギングをしたらかかとが痛くなった。
褥踵骨疲労骨折
【症状】かかとの骨(踵骨)の後ろ側が痛くなる。気がつかないうちに、この骨にヒビが入って、骨折している場合も多い。
【原因】 着地の衝撃が強過ぎること。底の硬いテニスシューズなどで走ったり、足首が硬く、足の運びが悪いために、かかとへの衝撃が強まる。
【予防・治し方】 クッションのよいジョギングシューズの使用と、自然な着地を意識した走り方が大切。ストレッチングは充分に。痛みは、 2~ 3週間完全に休めば取れるが、 トレーニング再開までにはもっと時間がかかる。骨折のうたがいもあるので医師に診断してもらうこと。



アキレス腱が痛み出したら早めに練習を控える
人が、歩いたり走ったりするのに必要な筋肉が集合しているのが、アキレス腱。
人の両足の重さは体重の35%に相当し、両腕の3倍の重さ。その機能を根底で支えているのがアキレス腱で、足の要である。
アキレス腱に出てくる症状は区別がつきにくく、専門医でも診断が難しい。
したがって、「おかしいな」と思ったら、早めに診てもらうこと。いたわりの気持ちを持って付き合うことが大切。


かかとの後ろが徐々に痛み出した。はアキレス腱付着部炎(アキレスけんふちゃくぶえん)
【症状】 かかとの後ろが痛い。ひざを伸ばして足首を反らすとあまり上がらない。

【原因】 かかとにアキレス腱が付着している部分の骨が、だいたいの人の場合突起しているため、起こしやすい炎症。アキレス腱の老化や、柔軟性の低下が主な原因で、足首の硬い人に多い。シューズのクッション性などが不適当なために起きる場合もある。

【予防・治し方】 走る前後からふくらはざまで、足の裏全体のストレッチングを充分に行なう。特に日ごろから、その部分の手入れは念入りに。
シューズは走行時のかかとを保護し、安定性の高いものを履くこと。クッション性や構造的にかかとへの衝撃をやわらげるものを選ぶ。シューズの種類はいろいろあるので専門店で相談するとよい。
痛みを感じたときは、氷で冷やし、ふくらはぎのストレッチングを充分に行なう。

ジョギング中に徐々に痛みが出てきて、最後は痛くて走れなくなった。
アキレス腱炎

【症状】 かかとの骨のあたりがはれて、押すと痛い。走り始めに痛く、体が温まってくると痛みは軽くなる。 トレーニング後にも痛みが出てきて、慢性化しやすい。
【原因】走り過ぎでアキレス腱への負担が大きくなり、柔軟性が低下するために起こる。
【予防・治し方】走る前後に、ふくらはぎのストレッチングを充分に行ない、足首の柔軟性を高めること。
痛みが出たら早い時期に2~ 3週間の完全体養をとり、様子を見る。ただし、その間もストレッチングは欠かさずに行なうこと。
押しても痛みを感じないようだったら、 トレーニングを再開してもよいが、慢性化させないよう慎重に。できれば医師に診断してもらってからのほうがよい。

股関節が痛いとき
階段の上り下りや、足を交差させたときに、ももの付け根の外側の骨が痛むようだったら、要注意。また、付け根の部分を押すと痛むときは、早めに専門医に診てもらう。特に女性は骨盤が広く、そのぶん刺激を受けやすいので、ストライドの大きな走りには注意する。


4.すねの痛みは骨の疲労が原因
慢性化させないこと

すねの痛みは、長距離ランナーに見られる障害のうち、もっとも多いもののひとつ。
コースやシューズに問題がある場合もあるが、主な原因は走り過ぎによる疲労。また、扁平足の人が障害を起こしやすい。足底のクッションが弱くなっているためだ。骨折している場合もあるので、痛みがあるのに放っておくのはよくない。 トレーニングの内容を落とすか、完全体養して、ストレッチングを行なう。

ジョギングするとすねの内側が痛む。
脛骨過労性骨膜炎

【症状】 腫骨の下部、内くるぶしの上の部分がはれ、痛む。痛みのある所はほとんどこのあたりに共通しているのが特徴。
【原因】 走行距離を急に増やしたり、過度なスピードトレーニングが原因となりやすい。また、足首周りの筋力不足や、衝撃吸収性の悪いシューズの使用なども挙げられる。
【予防。治し方】 ふくらはぎと、すねの前の筋肉の充分なストレッチングが大切。また、クッションのよいシューズを使用する。
痛みを感じたらすぐに練習量を減らすか、できれば完全休養をとる。そのまま走り続けると、慢性化して最悪の状態(骨折)になる。

すねの外側が痛い。
ひ骨疲労骨折(ひこつひろうこっせつ)
【症状】誹骨の下部、外くるぶしの上の部分が痛む。走ると痛みが増幅し、安静にしていると痛みは軽くなる。
【原因】 走り過ぎやストレッチング不足など。また、足の形や動きが影響を及ぼすこともある。
【予防。治し方】 疲労を残さないトレーニングの実践。
シューズやコースの選択にも注意する。また、練習後のストレッチングは充分に行なう。
痛みを感じたらトレーニングを完全に中止する。2ヵ月ほど安静にしていればトレーニング再開は可能。ただし、様子を見ながら徐々に始める。

すねの上部が痛い。
脛骨疲労骨折(けいこつひろうこっせつ)
【症状】 肥骨上部の内側がはれ、痛む。歩くときには支障がなく、走ると痛むのが特徴。押すと痛みが強くなる。
【原因】走り過ぎが最大の原因。他に、ストレッチング不足や、クッションの悪いシューズの使用などが挙げられる。
【予防。治し方】 走りながら治そうという考えは禁物。
2~ 3ヵ月安静にしていれば、トレーニングを再開できるようになるケースが多い。休養している間は、負担のかからない水泳などをするのもよい。
この間もストレッチングは忘れずに。
最悪なのは充分な休養をとらないでジョギングを再開すること。せっかく落ち着いていた症状が再び悪化してしまう。



5.ジョガーに多いひざの障害
練習量を調整する

ひざは、走りを支える体の中でも最重要部分。ジョギング中の着地による小さな負荷が繰り返しここに集中する。よって、故障や痛みの発生がもっとも多い箇所である。
特に痛みが起きやすいのが初心者や高齢者、そして股関節の柔軟性に乏しい人。レースの途中で、これまで何ともなかったのに痛くなり、しかも、痛い部分が確定しないことが多い。O脚やX脚などが影響していることも大きな要因だが、ほとんどは、練習量が多過ぎることによるもの。様子を見て対処しよう。

お皿の下が痛い。
膝蓋靭帯炎(しつがいしんたいえん)
【症状】 ひざのお皿(膝蓋骨)の下の部分が痛む。最初は走り終わったときだけの痛みが、次第に走行中にも出るようになる。ムリに走り続けると、歩行中でも痛みが引かなくなる。また、走り始めて体が温まると、痛みが軽くなることもある。
【原因】 走行距離やスピードにムリがある。 トレーニングのし過ぎ、筋肉の柔軟性の低下、摩耗したシューズの使用など。
【予防・治し方】走る前後のストレッチングを充分に行なうこと。痛みがあるときは安静にし、痛みが完全に取れたら、ひざの周囲の筋カトレーニングをするのも効果がある。ただし、走る日と筋カトレーニングの日の区別をきちんとつけること。
トレーニングは軽めにし、トレーニング後は患部を氷で冷やす。できれば専門医の所へ何度も通い、時間をかけて治療してもらったほうがよい。



下り坂でひざの内側の痛みが大きくなる。
膝蓋軟骨軟化症(しつがいなんこつなんかしょう)
【症状】 ひざのお皿の内側が痛く、痛みは坂の下りなどでさらに強くなる。階段での下りや、長時間ひざを曲げているときでも痛くなる。
【原因】 いろいろな要因が重なっている。お皿の骨(膝蓋骨)の形状に異常がある、内股傾向、また、ふくらはぎや大腿の筋肉が硬かったり、など。
【予防・治し方】 足全体のストレッチングを充分に行なう。特に、女性は内股傾向が多いので走り方、走り過ぎに注意しよう。ひざの周囲の筋力を強化することも必要だ。
痛みを感じたら、練習量を減らす。それでも効果がないときは、しばらく練習を休む。
この間、足全体のストレッチングは続けるようにしよう。
痛みがひどいときは、専門医の診察を受けること。


坂の多いコースでスピードを上げたら、ひざの外側が痛くなった。
腸腔靭帯炎(ちょうけいしんたいえん)
【症状】 スピードを上げたり、コースが下り坂になったりすると、ひざの外側が痛くなり、屈伸が思うようにできなくなる。これは、長距離走者に多い障害だ。
【原因】 骨盤と下肢を結ぶ筋肉(腸腫靭帯)にストレスがたまり、摩擦力が大きくなることが原因。O脚や、回内足(ひざから下が内側に通常より大きく回る)、また、ストライドの大きい走り方でも症状が出てくる。
【予防・治し方】 日ごろから下肢のストレッチングは充分に行なう。また、股関節周囲の筋力強化が予防として有効だ。
痛みが生じたら、スピード距離を落とした練習に変え、終了後、水で患部を冷やす。
それでも治らないときは、完全体養して、医師に診断してもらう。

お皿の上部が痛い
有痛性分裂膝蓋骨(ゆうつうせいぶんれつしつがいこつ)
【症状】 はれはなく足の動きにも異常はないが、お皿の外側上部が痛い。しかし、 トレーニングをやめていると日常の生活では、痛みはない。
【原因】お皿の骨(膝蓋骨)はふつうひとつなのだが、生まれつき分裂している場合がまれにある。このため、分裂部分に衝撃がかかることで、痛みが生じることになる。
【治し方】走りの量をまず落とすことが大切。周辺のストレッチングをよく行ない、ひざにかかる負担を軽くする。
痛みが変わらないときは専門医に相談しよう。


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