目次

疲労がたまる理由はなぞのままだが考えられる4つの原因

1.脳は疲労をコントロールしている?

●疲労とは
一般に疲労とは身体的・精神的な活動の結果としてその活動を継続することが困難になる生理現象であり、その活動を中止すれば元の状態に回復できる状態を指します。

疲労とは生命維持にとって必要な危険信号であり、生体の内部環境の乱れを警告する役割を果たしていると考えられます。

●疲労の原因
疲労の原因はよくわかっていませんが、運動時の疲労は以下のような多くの要因が複雑に関わっていると考えられます。

①エネルギー源の枯渇
筋を収縮させるためにはエネルギーが必要です。そのエネルギー供給が運動による消費に追いつかなくなるために、筋収縮ができなくなってしまうのです。

②疲労物質の蓄積
筋収縮の結果、その代謝産物として乳酸が生じます。
この乳酸が蓄積すると筋や血中のpHが低下し(酸性に傾き)酵素活性が低下するなどして持続的な筋収縮が困難になります。

③内部環境の失調
生体内を安定状態に保とうとするバランス(恒常性;ホメオスタシス)が運動によって崩れ、そのために疲労が生じます。
例えば発汗・脱水による水分バランスの崩壊などがあげられます。

以上は末梢の、特に活動筋を中心とした疲労といえますが、筋にはまだ余力があるのにからだを動かせなくなってしまうというような疲労もあります。この原因として筋を動かす中枢神経系(脳や脊髄)の疲労が考えられます(中枢疲労仮説)

④中枢疲労
中枢神経が疲弊することによって筋収縮を引き起こす信号発信頻度が低下し、その結果、筋収縮ができなくなってしまいます。中枢が疲労する原因として、脳内のセロトニン濃度の増加が考えられます。

長時間の運動はエネルギー源として利用可能なグリコーゲン量を減少させます。このときエネルギー基質として一部のアミノ酸が利用される割合が高まり、その代謝産物である血中遊離トリプトファン濃度が上昇します。

これが脳へ移行して脳内の遊離トリプトファン濃度上昇を引き起こします。

この遊離トリプトファンはセロトニンの前駆体であるため、結果として脳内におけるセロトニンの合成が増加します。

セロトニンの脳内作用についてはいまだ不明な点が多いのですが、その過剰な増加は運動ニューロンの興奮性を落ち込ませ、食欲を抑えるなどといった報告があります。

こうして運動によって引き起こされた脳内における慢性的なセロトニン増加は、疲労の心理的な認知・筋力・ホルモン分泌に影響を与えるとされています。

このようにして筋収縮を起こす命令を出す中枢神経系が疲労を起こし、結果、筋収縮ができなくなってしまうようですが、この中枢疲労仮説はいまだ仮説の域を脱しておらず今後の研究による実証が待たれるところです.

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