1日60g以上のたんぱく質が必要だけど肉でとる必要はなかった
筋力トレーニングは、超回復の時期をむかえることが、とても重要です。そして、超回復には、約24~48時間の休息が必要です。しかし実は、休息だけが超回復の条件ではありません。休息の間に、トレーニングで傷ついたり壊されたりした筋繊維の再合成を行なうためには、体内の栄養が欠かせません。体内の栄養が不十分だと、超回復が起こらず、トレーニングの効果は上がりません。筋繊維の再合成に必要な栄養素として、まずいちばんたいせつなのは、タンパク質です。タンパク質は筋肉のもとになる物質であり、筋肉の成長には欠かすことができません。
タンパク質といえば、まず肉類からとることが考えられます。しかし、肉類だけからとるのは、大いに問題があります。脂肪のとりすぎになるおそれがあるからです。脂肪とセットになったタンパク質のとり方をさけるためには、大豆タンパクプロテインをとるようにします。プロテインとはタンパク質のことで、製品化されているプロテインパウダーは、大豆の粉末を主原料にしています。
正しくとれば、筋肉をつくるためだけではなく 、健康や肥満防止にも役立ちます。しかし、プロテインだけをとっていれば、筋肉モリモリになると考えるのは、あまりに単純です。正しいトレーニング、正しい休息、そして十分な超回復がなければ、いくらプロテインをとったところで、筋肉は大きくなりません。そして、プロテインやタンパク質のとり方には、次の注意が必要です。
①プロテインはトレーニング後が良い
プロテインパウダーならびにタンパク質をとるのは、トレーニング後30~60分がいちばん理想的です。
なぜなら、トレーニング前に身体に吸収したタンパク質は、糖に変わりやすいからです。糖はパワーを生み出すエネルギー源ですから、ハードな運動をすると、血液内や筋肉内の糖がたくさん使われ、血液中の糖の割合(血糖値)が下がります。
すると身体は、血糖値を上げるために、トレーニング前にとり入れたプロテインを分解して、糖に変えます。それでは、せっかくプロテインをとり入れた意味がなくなってしまいますから、プロテインやタンパク質をとり入れるのは、トレーニング後、または食事のときにすべきです。
②取り入れる量は1回30g以下にする
プロテインが筋肉のもとになるからといって、とればとるほど筋肉が大きくなると考えるのは、大きなまちがいです。むしろとりすぎると毒になるので、十分注意してください。
タンパク質を体内にとり入れることができる量には、限界があります。1回で体内にとり入れる量が約30グラムを超えると、超えた分のタンパク質は、肝臓で糖や脂肪に変えられてしまうのです。
2.からだにはバランスのとれた食事が大切
からだは食物によってエネルギーを生み出したり、筋肉などの組織の形成、維持、修復を行なったり、消費、損失された生命維持に必要な化学物質を補充したりする。「食物」は基本的に五つの要素に分けられる。①タンパク質
②脂肪
③炭水化物
④ビタミン
⑤ミネラル
アミノ酸とタンパク質
タンパク質は、アミノ酸と呼ばれる化学物質が長い鎖状になったものである。窒素を豊富にふくんだ野菜や肉を食べると、そのタンパク質は胃や腸でアミノ酸に分解される。その後、アミノ酸は血流に入り、そこでタンパク質に再合成されることになる。タンパク質は少ないもので50、多いものでは数百のアミノ酸からなる。
食物から摂取できるアミノ酸は25種類ある。そのうち15種類は他のアミノ酸から合成でき、非必須アミノ酸と呼ばれる。残りの10種類は体内で合成することができず、食物から摂取しなければならない。
非必須アミノ酸
プロリン
タウリン
カルニチン
チロシン
グルタミンおよびグルタミン酸
システインおよびシスチン
必須アミノ酸
アルギニン
ヒスチジン
イソロイシン
ロイシン
リシン
メチオニン
グリシン
アラニン
βアラニン
Vアミノ酪酸
アスパラギンおよびアスパラギン酸
シトルリン
オルニチン
セリン
グルタチオン
フェニルアラニン
トレオニン
トリプトファン
バリン
国連の世界保健機関(WHO)では、1日に体重1キロあたり最低0.8グラムのタンパク質を摂取するように推奨している。つまり、体重80キロの人で1日64グラムのタンパク質が必要ということになる。運動選手や活動量の多い人なら、必要とされる量はずっとふえる。
イギリスの保健省では、18歳から34歳の男性で1日に体重1キロあたり1.2グラム、同年代の女性で一グラムのタンパク質を摂取するように推奨している。すなわち、体重80キロの男性で1日96グラムのタンパク質が必要ということになる。これは、特上のステーキ450グラムで摂取できる量に相当する。もちろん、実際の食事では、肉だけでなく、さまざまな種類の食品からタンパク質を摂取することになる。タンパク質は、魚、卵、乳製品、および種々の野菜、とりわけ穀物や、インゲンマメなどのマメ科の植物にふくまれている。
このため、菜食主義者でも、1日に必要なタンパク質、特に必須アミノ酸をさほど問題なく摂取することができる。卵や乳製品も食べない徹底した菜食主義者の場合はもう少し厄介で、食事もより入念に計画しなければならない。徹底した菜食主義の人にとって問題なのは、特定の野菜から得られるタンパク質では、必須アミノ酸が何種類かかけてしまうことがあるという点だ。
だが、さいわいなことに、どの野菜も同じ必須アミノ酸がかけているわけではない。そこで、徹底した菜食主義者が1日に必要な必須アミノ酸の摂取量を満たすには、いろいろな野菜、穀類、青葉を食べる必要がある。運動選手や、スポーツや激しいトレーニングを行なう人には高タンパク質食品が有益だと思われがちだ。つまり、こうした人々は筋肉の増強を望み、その筋肉はタンパク質から成り立っている、という論理である。だが、現在医師たちはステーキや卵といった高タンパク質食品を否定している。
バランスのとれた食事であれば、タンパク質だけでなく、糖質、脂肪、ミネラル、ビタミンといった他の重要な栄養素もすべてふくまれていて、じゅうぶんなタンパク質と必須アミノ酸も摂取できているはずなのだ。
赤身の肉には、心臓病の大きな要因の一つである飽和脂肪も多くふくまれている。しかも、スポーツを行なう人や運動選手にとって、脂肪はほとんどエネルギー源とならない。プロの運動選手に望ましい食事とは、複合糖質(炭水化物)が豊富で、タンパク質が適度にふくまれたものだ。
高タンパク質食品にはエネルギーを生成する糖質がじゅうぶんにふくまれていないことが多い。つまり、きわめて過酷なトレーニングのエネルギー源として不可欠なグリコーゲン(筋肉中の複合糖質)がたりないのだ。さらに、余分なタンパク質は体から排泄されるが、この排泄は水分を必要とする。高タンパク質食品中心の食事をしていると、トレーニング中にひどい脱水状態におちいることもある。
高タンパク質食品はさておき、最近では、激しい肉体労働やトレーニングを行なう人や運動選手には、ある種のアミノ酸を補助食品で補うことが有益であるという研究結果が出ている。こうした補助食品には必須アミノ酸と非必須アミノ酸の両方がある。グリシン、アスパラギン酸およびアスパラギン、アルギニン、グルタミン、セリン、タウリン、メチオニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、システインなどだ。
これらのアミノ酸には、他のアミノ酸を生み出すものもある。たとえば、メチオニンはシステインやタウリンに変化する。タウリンは傷の治癒に大切なはたらきをする。バリン、ロイシン、イソロイシンといった分岐鎖の必須アミノ酸は、激しいトレーニングのあとの筋肉の発達を促進する。
システイン、グリシン、アルギニン、グルタミンは、血糖の維持に関係している。アスパラギンおよびアスパラギン酸は、連動選手の持久力を向上させる。こうしたアミノ酸の補助食品や-特定の病気には使用できないものもある。望ましい摂取量については、医師に助言してもらうとよい。粉状のものが多く、通常は食後にとることをすすめられる。
高炭水化物食品をとったあとに服用すると有効なものもある。
1日に必要なタンパク質について、現在の医学的な助言をまとめると、つぎのようになる。
食事では、魚、鶏肉、野菜、マメ科の植物、青葉など、さまざまな食品からじゅうぶんなタンパク質を摂取する。
飽和脂肪(赤身の肉、ソーセージ、ハンバーグ)をふくむ食品からタンパク質をとることは避ける。
激しいトレーニング・プログラムを行なっているときは、特定のアミノ酸を補助食品で補ってもよい。こうした補助食品についてよく知りたければ、医師に相談する。
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