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ランニング前の準備運動はケガ予防に大切なので方法を教えます

ランニングのウォーミングアップ1.ランニングは、足で地面を蹴り、腕を振り、良い姿勢を保って走ります。

つまりランニングは全身運動なのです。この時に、足や腕をそれぞれバラバラに動かしていたのでは効率よく走ることはできません。体全体をうまく使って走ることが大切です。

全身を使って走るには、全ての筋肉をほぐし、温める必要があり、そのために行うのが準備運動です。

ところが、 ジョギングのようにゆっくりとしたランニングでは、「準備運動をしなくても走ることができる」と思うランナーもいることでしょう。しかしそれは間違いです。

準備運動とは、走るための準備をすることはもちろんですが、体をほぐすことでケガや障害を未然に防ぐことでもあるのです。準備運動には、 4つの目的があります。

全身の体温を上げること
呼吸循環系を準備すること…体の動きやフォームを滑らかにするために
全身の神経一筋の連携を確認すること…ケガや障害の予防として
筋肉や腱の疲労状況を確認すること
です。
これから、それぞれの項目についてお話ししていきます。


筋肉をあたためてエネルギー効率とパワーを高める
ウォーミングアップなどでからだを動かすと、筋内においてエネルギー源であるグルコースが分解され、熱が発生し、 まず筋温が上昇します。

筋温が上昇すると、筋はエネルギーを利用しやすい状態になるといわれています。筋温が1℃上昇するとエネルギーの利用効率は約13%上昇するという報告や、最大自転車こぎ運動の継続時間は筋温が約39℃ の時に最長を記録したという報告があります。

また、筋温が上昇すると筋の粘性が低下し、動きやすくなって、パワーが発揮しやすい状態になるともいえます。

体温を上げて、酸素をより多く使えるようにする
ウォーミングアップを行ってそれぞれの筋温が上昇すると、その結果として体温が上昇します。ウォーミングアップによって、運動開始時の酸素摂取量や心拍数の反応がよくなるとしています。

これはからだ中に酸素を運ぶ役割の血中ヘモグロビンが体温上昇とともに酸素を筋により渡しやすくなることと、軽い運動を事前に行うことによって、活動する筋への血流量が多くなり、心拍出量の増加が速やかに起こった結果だとしています。このような生体の反応により、筋は酸素をより多く使えるようになります。

そして、有酸素運動の場合では筋が酸素をより多く使えると、疲労物質である乳酸をあまり出さずに運動が続けられるため、パフォーマンスの向上が期待できます。

また、無酸素的な運動でも乳酸の酸化が効率よく進むため、運動後における乳酸性疲労からの回復が早くなるのです。


呼吸循環系の準備
自動車はエンジンをかけてから、全速走行するまでには少し時間が必要ですが、人間の体も、すぐにフル稼働できないようになっています。

走ることに重要な酸素運搬系=呼吸循環系は、 フル稼働までに時間がかかります。大気中の酸素を筋肉まで運ぶには、
①呼吸によって肺に空気を取り込む
②酸素と二酸化炭素を交換し、酸素がヘモグロビンと結合する
③血液が全身を駆け巡り、筋に酸素を供給する
というプロセスがあります。

このプロセスは、スイッチ1つで全体が円滑に稼働するわけではありません。準備が不十分だと、走り始めてから苦しさが襲ってくることがあるのです(これをデッドポイントといいます)。

そのため、呼吸循環系が円滑に働くよう準備しておくことが大切です。具体的にはゆったりしたジョギングかやや強めのウォーキングを行うと良いでしょう。


神経伝達速度を高め、動きをスムーズにする
その他、筋温や体温が上がることによって神経機能が充進します。
40℃ 程度までは筋温が高いほど神経伝達速度は速くなる(脳が命令してから筋が動くまでの時間が短縮)とされています。

筋温を上昇させると、筋が最大に力を発揮するまでの時間が短縮されると報告していますが、これは前述した筋のエネルギー利用効率の上昇や粘性の低下とともに、神経伝達速度の向上が影響しているからでしょう。

神経伝達速度が向上することで、からだの動きが円滑になり、さらに専門的な動作をウォーミングアップに組み込むことによって主運動時に、よりスムーズな動きができるようになるでしょう。

傷害を予防する
もう1つの理由に傷害予防があげられます。ウォーミングアップなしに激しい運動を行うと、拮抗筋(主働筋の動きと反対の働きをする筋肉。

例えば膝関節伸展運動時における大腿前面の筋と後部の筋)の腱付着部付近に断裂が起こりやすくなるという報告があり、その原因は「温度が低い時、筋は緩慢な弛緩をするため、お互いの筋で動きの協調性がとれないから」とされています。

つまり、ウォーミングアップをすれば、筋温の上昇により、筋が動きやすくなったり、神経伝達速度が向上したりして、筋の損傷を防ぐことができるといわれています。

また、ウォーミングアップにストレッチングを加えると、筋の損傷を防ぐという報告が数多くあります。ストレッチングは関節の可動域を広げ、パフォーマンス向上が期待できるとともに、筋や腱の断裂を予防します。また、筋肉痛を緩和するともいわれています。

もう1つの重大な効果
トレーニングにいきなり入るのではなく、そのまえにウォーミングアップを行い、ストレッチや専門的な動作を加えることによって、精神的な興奮水準も高まり、心身ともに「トレーニングできる状態」になります。これもウォーミングアップの重要な効果の1つといえるでしょう。


ランニングをする前、つまりウォーミングアップに、「どんなストレッチングをするとよいでしょうか」というご質問をいただきます。

「ストレッチ」という言葉が広く一般化していく中で、気づくと「ウォーミングアップ=ストレッチ」というイメージが広がってしまいました。

たしかに、ランニングの前に行うストレッチとして、体を動かしながら伸ばしていく動的なストレッチには、一定の効果があります。

ただし、これだけでは、ランニング前の準備として百点満点の50点といったところ。

ランニング前に必要なのは、ストレッチではなく、ウォーミングアップ。ストレッチはあくまでもウォーミングアップの一環にすぎないからです。

そもそも、ウォーミングアップの必要性とは、日常モードからスポーツモードに切り替えることにあります。
では、 一体何を切り替えればよいのか。
それは、以下の「三大シフト」と捉えています。
(1)ブラッドシフト
(2)マッスルシフト
(3)ナーバスシフト
です。
(1)ブラッドシフト…血液は、普段は生命維持に必要な脳、内臓に多く流れています。

一方、運動時には、エネルギーや体温調整を行うため、筋肉、皮膚などに流動させます。

(2)マッスルシフト…日常、筋肉は立つ、歩く、座るなど、末端側からの関節運動に依存しています。

一方、走る、跳ぶ、投げるなどの運動時には、体幹側からの関節運動に依存させます。

(3)ナーバスシフト…リラックスモードの副交感神経より、興奮モードの交感神経を優位にさせます。

前述の三大シフトを行うためには、体操やジョギングが最適です。それも、ランニング用の方法があります。

筋肉に対して、ストレッチは伸ばすこと、筋トレは縮めること、いずれにしても1方向、一部分しか動かすことができません。

一方で、体操は全身の筋肉が連鎖しながら、あらゆる方向に動きます。全身のバランスを取りながら、調子を整えることができるのです。
後述のプログラムを行い、ケガなくしっかりとパフォーマンスを発揮させましよう。

2.走る前にストレッチをすればケガのない快適なランになる
関節まわりをほぐす動的ストレッチをしよう
フォームの基本を練習した後は、目標であるランニングへステップアップしていきます。ただし実際に走り始めるとき、カラダが温まっていないなど準備ができていないとケガを起こす要因になります。

冬場はとくにカラダが冷えていて血流も悪い状態です。そんなカラダがランニングできるように、スタートする前に必ずストレッチを行いましょう。

運動を始める前に行うストレッチとしてオススメなのが、動的ストレッチと呼ばれる、動きの中で腕や足などをいろいろな方向に回して側筋の可動域を広げつつ、関節周辺の筋肉をほぐして温めるストレッチです。ランニングで必要となる動き作りを兼ねることができるため非常に効果的といえます。

筋トレ要素も入れたドリルや心拍数を高める連動を組み入れると、カラダが適度に温まり、走る準備万全となります。

全身の伸び
カラダの動きの中心である全身を伸ばそう
カラダ(体幹)を支える大きな筋肉である背筋や胸筋は、走るためにとても大切な筋肉です。
大きく伸びをして全身を活性化しましょう。ランニング前には必ず行いましょう。

手を組んで腕を上空に伸ばします。手のひらは上を向けて、つま先立ちになって大きく伸びましょう

腕体体し
を伸ばしたまま身体を左右に傾けます
側をしっかり伸ばしましょう


肩回し 
力みを取るために
肩をリラックスさせる
肩に力が入っていると、走りのフォームに影響が出ます。
走る前に肩を回して力みを取りリラックスした状態にしておきましょう。

胸を大きく反らしながら、前方の手を後ろに動かします

肩を手の指で触りながら前や後ろに回していきます。肩と背筋をほぐす意識を持ちましょう


肩入れ
腕振りでの前後の動きを肩入れで慣らしておく
腕振りの主要部分である肩周辺をしっかり柔らかくすることが大切です。腕振りは肩を支点に前後に動かされますので、走る前に肩入れで動きを慣らしておきましょう。

両足を広めに開き、両手をヒザ上に置いて腰を落とします。上体をひねりながら片側の肩を入れます

左右をバランス良く行いましょう。肩入れをする腕とは逆の腕は張るように意識しましょう


股関節上体ひねり
足全体と体側部は走る前の必須ストレッチ
股関節や足の筋肉はランニングで負担がかかる部位です。
走る前は必ず下半身を曲げたり伸ばしたりしましょう。これに上体ひねりを加えて体側をよく伸ばしておきます。

足を前後に広めに開きます。前足のヒザを90度に曲げて後ろ足を伸ばしていきます。両手は組んで太ももに乗せます


後ろに引いた足側の手を空中に上げながら上体をひねります。
上体をひねる方向は前足側の方向です。左右両方行います

アキレス腱伸ばし
ケガ防止のためにもアキレス腱伸ばしは入念に
走る動きはふくらはぎやアキレス腱が重要です。ランニングで負荷がかかるアキレス腱は入念に伸ばしておきましょう。
アップ不足はケガの要因になりますので忘れずに。

両足を前後に開きます。両手は太ももに置きます。前足のひざを軽くまげ、後ろ足のアキレス腱を良く伸ばします。


もも上げ
下半身の関節の可動域を広げ柔軟にする
走り動作に必要な太ももの前の筋肉や腰の筋肉、お尻の筋肉が鍛えられ、各関節の可動域が広がる動的ストレッチです。正しいランニングフォームを意識しながら行いましょう。

背骨を真っすぐにしたフォームを意識して太ももを上げていきます。ヒザが90度になるぐらいが目安です

その場でリズミカルにもも上げをします。
腕を大きくしっかり振って太ももを高く上げましょう

バットキック
後ろ足のカカトでお尻を蹴る動き
ランニングのフォーム作りで、重心を前に乗せて走ることを覚えるのに適している動作です。
後ろ足のカカトでお尻を蹴るようにして前進します。リズム良く行いましょう。

立った状態の姿勢から、勢いをつけて足を後方に上げます。
後ろ足のカカトでお尻を蹴るようなイメージです

上体を少しだけ前傾させて少しずつ前進します。姿勢良くリズミカルに左右交互に行いましょう

レッグランジ
お尻や太もも裏の筋肉強化に効果的
股関節の可動域を広げるだけでなく、ランニングで重要な役割を持つお尻や太もも裏の筋肉強化に効果的な運動です。
ただし、ヒザを痛めているときは避けましょう。

立ち姿勢から足を前に踏み出します。慣れてきたら足を高く上げましょう
前足に重心を移すようにします。
足はできるだけ大きく前に踏み出しましょう

腰を落としてキープします。後ろ足のヒザは地面に着くぐらいが目安です

前足を元に戻すようにして後ろに重心を移し、立ち姿勢に戻ります

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