目次

日常生活もすべて走ることのトレーニングになっている意識を持とう

1.まず、体と生活を見直す
自分の体を何とかしたい、健康的になりたいという思いでランニングをはじめる方もたくさんいます。ランニングで体が改善されればうれしい。しかし、毎日の生活をかえりみないでランニングだけしても、あまり現実的ではありません。

もともとヒトの体と心は一緒だった、という考えです。それが成長するにつれ、だんだん離れていってしまう。そして頭でしか物事を考えなくなり、気がつくと肥満になっていたり、生活習慣病になっていたりして体が悲鳴をあげるわけです。

ですから、体に何かを取り戻そうと働きかけるのではなく、自分の心を体に近づけてあげるという感覚で取り組んだほうがいいと思います。つまり、自分の体は自分のものではない、いわば「授かりもの」であって、いたわってあげなくてはいけないのです。

それを前提に、自分の体が朝起きてから夜寝るまでにどういうことをしているかを、見つめ直す必要があると思います。一度、紙に書き出してみましょう。

朝食はコーヒーだけで、昼間はたばこを山ほど吸って、夜は深酒をして午前様、などなど。何でもいっぺんに直すことはできなくても、体にとっていいことと悪いことの整理はできます。それはとても重要なことです。

もし、相手が運動選手なら当然すべて改善してもらうでしょう。すべて自分の体になっているわけだから、体に悪いものを摂取すれば自分がつらくなるだけです。「これは太るから食べるな」という単純な問題ではなく、自分で考えてコントロールする能力を身につけてほしいのです。一般の人はそれほど厳しく考えなくてもいいのですが、少なくとも体が悲鳴をあげている悪癖類をひとつでいいから、今すぐやめるべきでしょう。



ストレスも整理整頓
生活を見直すことはつらい作業かもしれません。でも、根本的な生活がめちゃくちゃなのに、ランニングだけやっても片手落ちだと思います。現象面より本質を考えるべきです。

具体的には食事、睡眠、ストレスを含むメンタルな問題、それにトレーニングをチェックします。食事は、偏食がひどくないか、無理なダイエットをしていないか。睡眠は6時間以上とれているか。

神経疲労は睡眠で回復しますが、筋肉を使う肉体疲労を回復させるには、6~8時間ぐらいほしいものです。走って汗をかくと気持ちがいいけれど、肉体には疲労が残りますから、やはり睡眠は大事です。

それからストレスの整理。生活を変えたくて走るという人は、ストレスも整理したほうがいいでしょう。複雑な人間関係を走る前に改善することはできませんが、走ることでうっぷんを発散することはできます。

たわいないこと、悩んでもどうしようもないことなど、ストレス発散に使うエネルギーを走るためのエネルギーに転換してみてはどうでしょうか。


2.日常生活がすべてトレーニングになる
マラソンを走るための基礎体力は、トレーニングのなかだけでつくられるものではない。たしかに、トレーニングの基本は走ることだが、日常のなかでもできることはいくつもある。

普段歩いているときにも、ランニングと同様に肩甲骨に意識を集中してしっかりと動かし、正しいフォームを崩さないようにして歩くようにするといい。ちなみに、歩くペースが遅くなればなるほど、体のいろいろなところへ意識を集中しやすいはずだ。

さらに、デスクワークの途中でも、胸を開くように意識したり、肩甲骨のストレッチをしたり、できることは多々ある。姿勢を正し、腹筋をしっかりと意識するといったことが日常的にできているのといないのとでは、ランニングフォームに大きく差が出てくるのだ。

日常生活のあらゆる場面が、自分の工夫次第では基礎体力づくりの場として活用できる。

まずは普段の生活のなかで、体や脚を動かすことを習慣化してみよう。こうした習慣が身につけば、時間とともに体にも変化が現れるはずだ。


通勤時に家から駅まで、そして駅から会社まで歩くという人は多いでしょう。この時間を単なる移動ではなく、トレーニングタイムに変えることができます。無意識に歩くのではなく、正しい姿勢で、しっかりと腕を引いてウォーキングを行なってみて下さい。

駅ではエスカレーターに乗るのではなく、階段を使いましょう。
しっかりと腕を引いて、お尻の下の筋肉を意識しながら階段を昇ります。「面倒くさい」と思っていた階段昇りもトレーニングだと思えば有意義に感じられるでしょう。

また、腹筋を意識して姿勢をよくしているだけでも十分なトレーニングになります。走るのに腹筋の力は、とても大切なのです。加えて姿勢をよくしていると、メンタル面も充実します。高い位置に視線を向けて胸を張り、立ってみて下さい。ポジティブな気持ちが宿るはずです。逆に、背中を丸めて下を向いているとネガティブな気分になっていきます。

姿勢はフィジカルのみならず、メンタル面の充実を考える上でも、とても大切で、それはあなたのランニングライフに直結します。
心がカラダを変えていくことがあれば、カラダが心を元気にしてくれることもあります。そのリレーポイントが「姿勢」です。
ランニングの基本は「正しい姿勢(立ち方)」。これは日常生活の中で養うべきものなのです。


腕振りは振り子ではなく回転運動
腕振りに関して特に目につくのが、振り子のように振っている人です。これではいくら背中を使っているといっても、前後運動にしかなりません。一回とまって戻さなくてはいけませんから。

そうではなく、わずかな回転運動に変えて、力を連動させなくてはいけない。背中の筋肉を使って腕を回転連動させると、自然と腰が前に出るものです。つまり、正しい腕振りをすれば腰を動かすのではなく、腰が動くのです。これだけで、確実に速く走れます。

速く走るには、ゆるませる
腕振り同様、市民ランナーに多い欠点が、筋肉を緊張させたまま走ることです。体をリラックスさせなくては、着地のときに瞬発力が得られません

前に進むは、自分の体重と筋肉から出した力を足の裏が地面をとらえた瞬間に生み出されます。推進力を生み出す作用・反作用の瞬間にこそ、力を爆発させるのです。しかし、そこにムダな力が入っていると、瞬間の大きな蹴りはできません。
筋肉というのは、ゆるんでいればいるほど、大きな力で速く収縮させることができます。

だからリラックスしている人は、着地したときに自然に力が入る。それが、考えすぎて余分な力が入っている人は、完全な弛緩ができていない分、収縮速度が鈍くなります。

「力を抜いてください」と言っても、普通はなかなかできません。それで、力を抜いて筋肉を弛緩させるトレーニングを考えました。それは、最初に拳を握って体中にぎゅっと力を込めます。

最大限の力を全身の筋肉に与えるようなイメージでやってください。そのあと、はっと力を抜く。これを3回繰り返したら、完全に筋肉が弛緩します。走る直前に、体をこの状態にしておきましょう。

この弛緩トレーニングは3分もあればできます。走る前の選手たちは、8秒ずつセットで行います。つまり、8秒間歯もかみしめるように力を入れて、8秒力を抜く、を繰り返します。それだけで、緊張して顔をしかめていた選手が、穏やかな顔になります。
簡単なので普段からやってみてください。体をリラックスさせる練習も大切なことです。

よく、レース前に笑うといいと言いますが、これも緊張をほぐして力を抜くのに効果的です。二人でしゃべって笑いながら走ると、変に緊張しなくてすみますから、リラックスして気持ちよく走ることができるでしょう。

3.自分のリズムをつかめ
ランナーの方がよく言うことのひとつに、「走るリズムがわからない」という声があります。これは確かにむずかしい。一人一人が長年かけて自分でつくっていくものですから。それを簡単に言えば、いわば体内メトロノームなのです。

オリンピッククラスの選手は体内メトロノームがめっぽう速い。高橋尚子選手なんか、1分間に210という普通ではちょっと考えられないようなピッチを刻むわけですが、本人にはそれが当たり前になっているので、普通のジョギングでもとにかく速い。

では、どうしたらメトロノームを速くできるのか?それは全体的なバランスであって、腕振りだけ速くしても速く走れるというものではありません。重要なのは、イメージです。

走りながら、体内メトロノームを速く刻むイメージを出してください。すると、走りはじめはこわごわ一歩一歩という感じだったのが、だんだんとリズムが出てきて流れるようにスタスタ走るようになる。そのときにはもうリズムのことなんて考えていないものです。頭から体へと自然に切り替わる、そういう変換期が必ず来ます。

ストライドはキックカじゃない
こうしたリズムはピッチ、すなわち回転数によって決まります。それは無理やり速くするものではなく、体内メトロノームを少しずつ速くしていくことだと説明しました。

では、ストライドを大きくすれば速くなるじゃないか、と言う人がいます。これは、勘違いです。キックカが強いとか、股を大きく広げるとか、それが歩幅だと思いがちですが、ストライドは着地したインパクトの強さで決まるものです。

つまり、体幹の大きな筋肉を動員して着地を強くすると、一歩の大きさは自然と広がる。

それがストライドです。キックカが強いという表現は、単にひざから下のふくらはぎが強いだけで、それは小さな筋肉ですから長続きしません。キックカだけで長距離はもたないのです。だから、ストライドは無理に大きくする必要はありません。体幹の筋肉を使えば、自然に大きくなっていきます。

また、リズムが速くなってくると、足の返りも速くなります。足の返りが速くなると、それだけ地面をとらえるスピードが上がる。すると、エネルギーとスピードが大きくなって、より大きな力が伝わります。

つまり、ピッチが速くなると正しい走りができて、自然にストライドも大きくなるわけです。ですから、腕を振ってピッチを速くしようとか、ストライドだけ大きくしようとか考えないほうがいいのです。

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