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スポーツ選手の能力は遺伝による要素も大きかった

競技力に遺伝はどの程度影響するのか?
親子での活躍
スポーツ競技において、親子二代が活躍する姿を見かけることがあります。例えば、相撲における貴乃花関親子がそうですし、陸上ではハンマー投げの室伏選手親子がそうです。

このように親子が活躍する理由として、一流選手である親の公私にわたる姿を見て一流を身近に感じられることや一流の競技選手であった親から直接指導を受けられることなどが考えられます。しかしながら、多くの人は血筋や血統と呼ばれる親からの遺伝が大きく影響していると考えるのではないでしょうか。

体型に遺伝は影響しているのか
実際競技力に関わる身体特性には親からの遺伝に大きく影響を受けるものがあります。体型もその1つで、身長については両親の身長が高ければほぼ100%の確率で子どもの身長も高く、体重においても両親が太っていれば子どもは約70%の確率で太るとされています。

このことは、身長や体重などの体型の違いによって影響を受ける競技種目では遺伝の影響、いわゆる「素質」というものが存在しているといえます。

筋の線維組成も遺伝の影響が
身長や体重といった量的な面に加えて、質的な面においても遺伝の影響を受けます。筋の収縮力やスピード、さらに持久力に影響を及ぼすことが知られている筋線維組成がその1つです。

筋肉は速筋線維(収縮スピード、収縮力は高いが疲れやすい特性をもつ)と遅筋線維(収縮スピード、収縮力ともに低いが持久力に優れた特性をもつ)と呼ばれる筋線維によって構成されています。この構成の割合、つまり筋線維組成は個人個人によって大きく異なることが知られています。

かつてマラソンを2時間8分台で走ったアルベルト・サラザール選手の俳腹筋の筋線維組成は93%が遅筋線維で構成されていたとの報告がある一方で、一流の短距離走選手の筋肉は遅筋線維がほんのわずかしか存在していません。

遺伝的に等しい一卵性双生児と遺伝的には別である二卵性双生児の筋線維組成を比較したところ(どちらも同様な環境で生活)遺伝的に等しい一卵性双生児のみが筋線維組成が似ていたと報告しています。そして筋線維組成の遺伝率を算出し、90%以上が遺伝によって説明できると述べています。

生まれつきの筋線維組成はトレーニングによって変化するのか
最近、持久的トレーニングや筋カトレーニングによって、速筋線維の中でも持久力に優れた筋線維への移行が確認され、さらにトレーニングを積めばより持久力に優れた線維への移行も可能であると考えられるようになってきました。

体力は遺伝の影響を受けるのか
上記の形態的な特性に加えて、競技力に影響を及ぼすとされる体力面についても遺伝の影響を受けます。

血液循環に影響を与えるアンギオテンシン変換酵素(ACE)の遺伝子型である3つのタイプに対するトレーニング効果の違いを調べたところ、特定の遺伝子を持つ人では、 トレーニングによって筋持久力の向上が大きく、逆に他の人ではほとんどトレーニング効果がみられなかったと報告しています。

遺伝子研究の分野ではこのような持久力に関わる遺伝子のほか、身体組成に関係する遺伝子(レプチンなど)や筋肥大に関係する遺伝子(ミオスタチンなど)もみつかっており、ほとんどの形態的、体力的特性は多少の差はあるにしても遺伝の影響を受けていると考えられます。

将来的にはどのようなスポーツ種目に向いているかを示す遺伝的情報を利用して、各個人がスポーツを選ぶ日が来るかもしれません。

遺伝は必要条件にすぎない
以上のようなことを示すと、遺伝によってすべてが決まってしまうと考えるかもしれませんが、あくまでもこれら遺伝的要素は一流になるための必要条件にしかならず、それだけでは一流になれるものではありません。

体重などは運動による消費と食事による摂取カロリーを考えればコントロールできるし、 トレーニングによって持久力の優れた筋線維を増やすことも遺伝の影響が強いとされる最大酸素摂取量も増加させることができます。

つまり、遺伝の影響の強い形態的、体力的要素であっても日々の努力によってある程度改善することが可能です。

スポーツ競技では素質も確かに存在しますが、素質という言葉に逃げずに努力を惜しまずトレーニングすることが大切です。本当に優秀な選手は競技のことを真剣に考え、よく練習しているのではないでしょうか。